パレスチナ自治区ガザ情勢はイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの本格的な市街戦が切迫する中、ハマスに拉致された人質約240人の安否が一段と懸念される事態になった。人質解放交渉はペルシャ湾のカタールを舞台に行われているが、先行きは予断を許さない。同国はなぜ人質解放の仲介者となっているのか、〝小国の知恵〟とその背景を探った。
ハマス指導者が居住
人質解放交渉がカタールの首都ドーハで行われているのは何よりも同国がハマスに影響力を持ち、同組織の政治指導者の滞在や事務所開設を容認しているからに他ならない。米紙などによると、ドーハには米国のリーフ国務次官補(近東担当)ら米代表団や情報機関モサドなどイスラエル代表団が入り、カタール当局者がハマス指導部との間をつないで間接的に交渉を続けている。
ハマス側は現在、「5日間の停戦」と引き換えに人質の解放を提案しているようだが、イスラエル側は応じていない。ネタニヤフ首相は「すべての人質が解放されない限り、停戦はない」と表明しており、「人道休戦」を求めるブリンケン米国務長官の働き掛けを拒否、交渉が難航するのは必至だ。
見逃せないのはハマスが人質全員を拘束しているわけではないという点だ。ハマスとは別のガザの過激組織「イスラム聖戦」が人質の一部を捕えている可能性が高い。
ハマス側で交渉を仕切っているのはドーハに滞在しているハマスの指導者、イスマイル・ハニヤだ。ハニヤは2017年、やはりドーハに居住している前指導者のハリド・マシャルから指導者の地位を引き継いだ。