パレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマス壊滅を目指すイスラエル軍は27日夜から越境作戦を展開、通信網を遮断して〝事実上の地上侵攻〟を開始した。ネタニヤフ首相は「地上部隊を追加投入し、作戦が第2段階に入った」と宣言した。米国が侵攻に難色を示している上、停戦を求める国際包囲網が強まっていることなどから〝なし崩し的〟に地上部隊による作戦に踏み切ったようだ。
米が全面支持を軌道修正
約1400人のイスラエル市民らが殺害された10月7日のハマスの攻撃から3週間が経過した。攻撃直後にはイスラエルがすぐにも報復の地上侵攻をするのではないかとみられていたが、ネタニヤフ政権は侵攻を先送りし「今世紀最大の空爆」(米紙)とも言われるガザへの無差別爆撃を続けてきた。
この攻撃でパレスチナ側の死者は28日現在、約7700人を超え、うち子どもの犠牲は3000人に達した。イスラエルはガザの市民に南部への避難を呼び掛け、約70万人が移動したとされる。だが、避難の途中で攻撃を受けた人たちもいる。ガザ南部のエジプト側から水、食料、医薬品などの人道物資が少しずつ搬入されているものの、燃料は許されず、病院が深刻な危機に陥っている。
ハマスに捕らえられている人質は約220人。解放交渉はハマスと太いパイプを持つペルシャ湾岸のカタールを介して行われているが、これまでに解放された人質は4人だけ。こうした中、イスラエルの国内世論も変わった。
当初は迅速な地上侵攻を支持する人が6割を超えたが、27日のイスラエル紙マーリブの世論調査によると、「侵攻を待つべき」とする人が5割に及び、速やかな侵攻を支持する人は3割弱にとどまった。
イスラエルの後ろ盾であるバイデン政権の姿勢も激変した。米ワシントン・ポストなどによると、同政権は初め「イスラエルの決断をなんでも支持する。やりたいようにやれ」と全面支持していたが、ここにきて「戦略を再考すべきだ」というふうにイスラエルへの物言いが厳しくなった。