イスラム主義勢力ハマスが2023年10月7日、イスラエルに対する大規模攻撃「アルアクサの洪水」を仕掛け、それに報復する形でイスラエルがガザ地区に対する空爆・砲撃を続けている。電気・水・食料・燃料も断たれている状況だ。現時点(10月19日)で、イスラエル・パレスチナ双方に5100人を超える死者が生じた。石油危機で知られる第4次中東戦争(1973年)以来の惨事とも呼ばれる。
そうした中、イランとハマスの関係性が大きな焦点となっている。イランは今回のハマスの攻撃に関与したのだろうか。また今回の戦闘は地域・国際情勢にどのような影響を及ぼすのか。
イランと米国・イスラエルが示す立場
まず、ハマスによるイスラエルに対する大規模攻撃を受けての各国の反応を確認しておきたい。
10月7日、イランのサファディ最高指導者付軍事顧問は、ハマスの作戦を称賛する立場を示した。キャナアーニー外務報道官も同日、今回の事件はイスラエルによる入植・占領に対するパレスチナ人民の自然な反応だと述べたことから、イランのハマス支持の立場は公式のものと考えてよかろう。
続く10日、ハーメネイー最高指導者は、今回の攻撃はパレスチナ人によって実行されたもので、「イランは関与していない」と疑惑を否定した。
イラン政府は、イスラエルによる地上侵攻をさまざまな形で牽制してもいる。アブドゥルラヒヤーン外相は12日、訪問先のベイルートで、イスラエルのガザ攻撃が続けば「抵抗の枢軸」が集団的に反撃するだろうと警告した。「アルジャジーラ放送」の取材に対しても15日、同外相は、もしイスラエルがガザ地区に進攻すれば、抵抗運動の指導者らが報復することになると警鐘を鳴らしている。
要するに、イランの今回の事案に対する主な反応は、(1)ハマスの作戦の称賛、(2)イランの関与の否定、(3)イスラエルの地上侵攻への警告の3点にまとめられる。
一方、米国とイスラエルは、イランの関与を疑っているものの、断定にまでは至ってない。10月8日付『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、革命防衛隊がハマスに作戦の指示を下したとの一報を伝えた。しかし、米国のブリンケン国務長官は、「米国はイランが指示した、あるいは今回の攻撃の背後にいたとの証拠を見ていない」(9日)と述べるに留めている。バイデン大統領も、イランに「注意せよ」(11日)と牽制はしているが、イランが首謀者だとまでは断言していない。