中東を読み解く

2021年5月16日

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 イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザのイスラム原理主義組織ハマスとの交戦は5月15日も続行、パレスチナ側約130人、イスラエル側8人の死者が出た。ハマスは2300発を超えるロケット弾を発射、イスラエル軍は空爆と地上部隊の砲撃を激化させた。中東最強のイスラエル軍に挑むハマスとはどんな組織なのか、その実態をクローズアップした。

イスラエルに向けてガザ地区からロケット弾を発射するハマス

イスラム原理主義国家が目標

 ハマスは「イスラム抵抗運動」の意。源流はエジプトのイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」で、1987年12月にアハメド・ヤシンがガザ地区で創設した。その最終目標は「イスラム原理主義国家」の樹立であり、イラク、シリアを席巻したあの「イスラム国」(IS)と目指すところは基本的には同じだ。

 ハマスはイスラエルの生存権を認めていないし、武装闘争の旗も降ろしていない。このため米国はハマスをテロ組織に指定している。パレスチナの現状を規定することとなった93年のオスロ合意により、ヨルダン川西岸と地中海沿いのガザ地区がパレスチナ自治区となった。イスラエルは当初、ガザ地区に駐留していたが、その後撤退。ガザ地区とイスラエルの境界にフェンスをめぐらし遮断した。

 ガザ地区は東京都23区の面積の6割程度しかない。イスラエルのガザ隔離政策によって、地中海に面するガザの出入り口はイスラエル側の検問所とエジプト側の検問所の2カ所だけとなった。海上もイスラエル艦船が常時監視しているため、海からのガザへの出入りは不可能になった。ガザが「天井のない巨大な監獄」と言われる所以である。

 ハマスはこうした閉塞状態の中、ガザの約200万人のパレスチナ人の指導的な立場を確立していった。2006年に行われたパレスチナ評議会選挙(議会選挙)で、ハマスはパレスチナ自治政府を牛耳る主流派の政党ファタハに圧勝、過半数を超える74議席を獲得した。ファタハは45議席にとどまった。

 翌07年にガザでハマスとファタハの内戦がぼっ発したが、ハマスの勝利に終わり、それ以降ハマスはガザの実効支配を確立した。ハマスは貧困層などへの教育、医療、福祉事業といった社会活動も進め、パレスチナ人の人気を高めていった。アラブ諸国の中では、カタールがハマスを支援している。

 こうしたハマスの勢力拡大を懸念したイスラエルはハマス幹部の暗殺や軍事拠点への空爆を常時実施、09年1月に軍をガザに地上侵攻させて衝突した。イスラエル軍は2014年7月にも地上侵攻。1カ月に及ぶ戦闘で、パレスチナ人2250人が死亡、イスラエル側も兵士ら70人が犠牲になった。

 ハマスの現在の指導者はカタールに亡命中のイスマイル・ハニヤ。ハマスは政治部門と軍事部門「カッサム旅団」に分かれており、同旅団の司令官はモハメド・デイフ。戦闘員は約3万人。ハマスは今回のイスラエルとの交戦を、パレスチナ人社会の中でその存在を誇示できるとして歓迎しているとの見方も強い。

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