中東を読み解く

2021年4月28日

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 ペルシャ湾で4月、イラン革命防衛隊の高速艇が米艦船に異常接近して挑発する事件が相次いだことが分かった。2度目は米艦船が警告射撃に踏み切っており、偶発的な衝突の懸念が高まっている。事件の背景にはイラン核合意への米復帰に反対する革命防衛隊などの保守強硬派とロウハニ大統領ら穏健派との権力闘争が激化していることがあるようだ。

(wildpixel/gettyimages)

「軍事部門が国家を牛耳る」と内幕暴露

 米海軍の発表としてロイター通信やニューヨーク・タイムズなどが報じるところによると、ペルシャ湾北部海域で26日夜、イラン革命防衛隊の高速艇3隻が米第5艦隊所属の哨戒艇「ファイアボルト」など2隻に異常接近、一時は60メートルまで近づくなど挑発を繰り返した。

 「ファイアボルト」はイラン高速艇に無線で何度も近づかないよう要求したが、従わないため警告射撃に踏み切った。この警告射撃で高速艇が離れたことから衝突などには至らなかったという。これに先立って2日にも同湾でイラン高速艇による米艦船に対する挑発が3時間にわたって続けられたという。

 同紙によると、こうしたイラン側の挑発行為は2015年に23回、16年に35回、17年に14回あったものの、18年以降はほとんど影を潜めた格好になっていた。軍事専門家はイランの挑発行動が米側の過剰反応を招くなど、偶発的な衝突につながる恐れがあると警告している。

 なぜ今になって再び、イランの挑発行動が顕在化しているのか。この理由について中東のアナリストらは「ウィーンで再開されたイラン核合意への米復帰協議と連動している。米復帰に反対する革命防衛隊や聖職者などの保守強硬派の思惑を反映した動きだ。米国との緊張激化の状況を作って、ロウハニ政権の復帰協議をぶち壊そうとしている」と分析している。

 イランの権力闘争が関係しているとの見方だが、この権力闘争の内幕は、はからずも最近国外にリークされたザリフ外相の秘密の音声録音から明らかになった。この録音は外相と経済学者との間で3月に交わされたもので、そのコピーが最近、ロンドンのペルシャ語ニュース・チャンネルにリークされた。

 ザリフ外相はこの中で「イランは軍事部門に牛耳られており、彼らのせいで外交を犠牲にしてきた」と指摘、外相としての役割が厳しく規制され、政府の決定は最高指導者のハメネイ師や革命防衛隊によって命じられていると心情を吐露している。

 さらに、米国に暗殺された国民的な英雄、革命防衛隊のエリート部隊の司令官ソレイマニ将軍について、ロシアと結託してイラン核合意をつぶそうとしたと批判。ロウハニ政権の了承を得ずに、ロシア軍機がシリア向けに軍備増強できるようイラン領空の通過を認め、イランの地上部隊をシリアに派遣したなどと非難している。

 ザリフ外相は同司令官については、公式には敬う姿勢を見せてきたが、実際には相当敵対していたことが明らかになったわけで、伝えられてきた権力闘争の姿が浮き彫りになった。イランの国会議長が録音のリークについて、捜査を開始するよう要求する騒ぎになっている。外相の英雄をけなした発言は6月の大統領選挙で、穏健派候補に不利に働くのではないかと懸念されている。

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