中東を読み解く

2021年4月8日

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 イラン革命防衛隊の軍用船が6日、紅海上でイスラエルによると見られる機雷攻撃を受けた。両国はこのところ、中東の海域で互いの船舶を攻撃する“影の戦争”を展開してきたが、一気にエスカレートした格好。この日はウィーンでイラン核合意の再建をめぐり、米国とイランが間接協議しており、攻撃激化は「交渉をつぶすため」との指摘も出ている。

(petrovv/gettyimages)

居座っていた〝スパイ船〟

 中東のメディアや米ニューヨーク・タイムズなどによると、攻撃を受けたのはイランの貨物船サビズ。同船は、実際には革命防衛隊が軍事転用していた船舶で、数年前から紅海の出入り口であるバブエルマンデブ海峡付近の公海上に停泊していた。

 革命防衛隊は停泊の理由について、海賊からイラン船を護衛するためとしていたが、アジアと欧州をつなぐ大動脈である紅海の航行の情報を収集する〝スパイ船〟だったと指摘されている。イランのタスニム通信はサビズが吸着機雷による攻撃を受けたと伝えた。サビズの甲板には何隻かの武装高速艇が積まれており、革命防衛隊の前線基地だったとの報道もある。

 ニューヨーク・タイムズが米当局者の話として報じたところによると、イスラエルから米国に対し、同日午前7時半にサビズを攻撃したとの通告があったという。理由として、イランによるイスラエル船攻撃への報復、と説明した。イスラエルの自動車運搬コンテナ船が3月25日、ホルムズ海峡近くのアラビア海で、イランからと見られるミサイル攻撃を受けていた。

 イスラエルによるイラン船の攻撃激化は最初、米ウォールストリート・ジャーナルが特ダネで報じたもの。その後、ニューヨーク・タイムズなどが後追いした。それらの報道によると、イスラエルは2019年以降、少なくとも10隻を超えるイラン船を攻撃した。イラン石油省当局者は攻撃を受けたのは20隻よりも多い可能性に言及した。

 標的になったイラン船のほとんどはシリア向けの石油タンカーだったが、2隻はイラン配下のレバノンの武装組織ヒズボラなどへの軍事物資を運搬していたという。今月初めにもイスラエル沖80キロの海上で「スペインに向かっていたイラン貨物船がテロ攻撃を受けた」(イラン国営メディア)事件が発生したが、イスラエル高官は同船がシリアへの軍事装備品を運んでいたとしている。

 ベイルートの情報筋はイスラエルがイラン攻撃を激化させている狙いとして、①ヒズボラへの武器輸送、とりわけ精密ミサイル部品の搬入②米国の経済制裁をすり抜けるシリアへの石油売却③シリア駐留の革命防衛隊やヒズボラへの武器送付―を阻止するためであることを指摘している。

 シリアへのイラン石油タンカーは紅海からスエズ運河を通って地中海に出る航路を取るが、通常の場合、地中海側にはシリアを支援するロシア艦船が待機し、イランタンカーを護衛するという。ニューヨーク・タイムズによると、石油不足に悩むシリアのアサド政権はイランからの石油購入代金を現金、ないしはシリア駐留の革命防衛隊への補給支援で肩代わりするとされる。

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