中東を読み解く

2021年3月8日

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 サウジアラビア東部ダンマン近郊で7日、国営石油サウジアラムコの施設がミサイルと無人機により攻撃され、サウジと敵対するイエメンの反政府勢力フーシ派が攻撃実行の声明を発表した。大きな被害はない模様だが、一昨年の攻撃ではサウジの石油生産の半分が停止する被害が出た。同派による最近の攻撃激化はバイデン政権の〝融和策〟が裏目に出たのではないかと懸念されている。

昨年11月にもフーシ派の攻撃を受けたサウジアラムコの石油施設(REUTERS/AFLO)

一昨年の悪夢再び

 ダンマン近郊にはサウジの石油施設が集中しているが、サウジ政府によると、石油の主要積出港ラスタヌラにあるアラムコの石油タンクが無人機の攻撃を受けた。また同日夕には、ミサイル攻撃があり、ダーランにあるアラムコの住宅地域に着弾した。サウジ側は無人機10機などを撃墜し、「人的被害や、石油施設への損害はなかった」としている。

 サウジ側は民間地域を攻撃するのは「レッドライン」(超えてはならない一線)を超えているとして、フーシ派が支配するイエメンのサヌアに報復爆撃を加えた。フーシ派はアラムコの施設を無人機14機とミサイル8発で攻撃したと発表、「アラムコへの攻撃はサウジの侵略に対する当然の権利」と正当化した。

 2019年9月にはダンマンから約60キロ離れたアブカイクにある世界最大規模の石油施設と油田が無人機とミサイル攻撃を受け、570万バレル(日量)の石油生産が一時的に停止した。同国の生産量は当時985万バレル(同)。これは世界の10%に相当するが、その半分以上が打撃を受けることになった。今回の攻撃は当時の悪夢を思い起こさせるものだ。

 それにしてもフーシ派のこのところのサウジ攻撃は激化の一途だ。1月にサウジの首都リヤドを攻撃したした後、2月末にも同じくリヤドを狙って無人機とミサイルで攻撃、今月の4日には西部ジッダにあるアラムコの石油施設にミサイル攻撃を行った。サウジ側はいずれも撃墜するなどして攻撃を阻止したとしている。

 なぜ、フーシ派が攻撃を激化させているのか。中東の軍事専門家の間では、バイデン政権のフーシ派に対する“融和策”が裏目に出ているのではないかとの観測が多い。バイデン政権は2月初め、サウジのイエメン戦争続行のための武器支援を停止することを決定、武器を供与してきたトランプ前政権の方針を劇的に転換した。

 次いで前政権によるフーシ派のテロ組織指定の解除に踏み切った。バイデン政権は解除の理由として、「世界最悪の人道危機に直面するイエメン国民への援助を容易にするため」であることを挙げた。さらにロイター通信によると、バイデン政権のイエメン担当のレンダーキング特使が先月26日、オマーンの首都マスカットでフーシ派代表と極秘に会談した。

 会談では特使が激戦となっているイエメン西部マーリブの戦闘の停戦に応じるようフーシ派側に求めたという。こうした一連のバイデン政権の融和的な姿勢をフーシ派が誤ったメッセージとして受け取り、その結果、サウジ攻撃が激化しているという指摘は的外れではないだろう。だが、攻撃激化の背景には、やはり同派を支援するイランの思惑があるとの見方も強い。

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