中東を読み解く

2021年4月12日

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 イラン国営メディアなどによると、同国の核開発の中枢である中部ナタンズの核施設で11日、爆発があり、電力が全面的にダウンした。イラン原子力庁のサレヒ長官は「核テロ」と非難した。イスラエルの公共放送などは「イスラエルの対外特務機関モサドのサイバー攻撃」と伝えている。ウィーンのイラン核合意の米復帰協議にも影響を与えるのは必至だ。

10日、テヘランで行われた核開発に関するイベントに参加したロウハ二師( Iranian Presidency Office/WANA /REUTERS/AFLO)

新型遠心分離機の稼働を標的

 ナタンズの核施設はこれまでにも、イスラエルによるものと見られる破壊工作を受けてきた。昨年7月にも施設が爆破、放火される事件が起こり、モサドの作戦とされてきた。今回の爆発について、イラン原子力庁は当初、事故で損害もなかった発表していた。しかしその後、サレヒ長官は名指しを避けながらも「核テロ」と破壊工作によるものであることを明らかにした。

 長官は今回の事件が「イランの核開発や制裁解除の協議に反対する連中の敗北を示すもの」と指摘した。米ニューヨーク・タイムズが情報当局者の発言として報じるところによると、核施設は爆発により、地下に設置した遠心分離機に電力を供給するシステムが破壊されるという大きな損害を被り、復旧には「少なくとも9カ月は必要になる」という。

 イスラエルの公共放送KANは情報筋の話として、「モサドによるサイバー攻撃だった」と伝え、またニューヨーク・タイムズも情報当局者の発言として、イスラエルによる秘密作戦のようだと報じた。イスラエルのコチャビ参謀総長はナタンズの事件には直接言及しなかったものの「イスラエルの安全を守るために引き続き行動する」と決意を表明。ネタニヤフ首相は同夜、独立記念日前の演説で「イランやその代理人との戦いは重要な任務だ」と言明した。

 イランは爆発があった前日、この施設で改良型の遠心分離機「IR6型」を新たに稼働させたばかり。式典でロウハニ大統領はイランの核開発があくまでも平和目的であることを強調したが、モサドの作戦とすれば、彼らは最新型の遠心分離機が本格的に稼働したタイミングを狙って攻撃したことになる。

 今回の事件で注目すべき問題が3つある。1つ目はイスラエルの破壊工作だとして、イランが今後、報復に出るのかどうかだ。イランの最優先課題は米国による経済制裁の解除であり、これを困難にさせるような報復行動などには出ないとの見方が一般的だ。昨年11月にイランの核開発の父といわれる科学者ファクリザデ氏がモサドと見られる作戦で暗殺された時にも、報復行動は起こさなかった。

 2つ目はモサドの犯行として、米国に事前に通告があったのかどうかだ。イラン革命防衛隊の軍用船が紅海で先週、イスラエルによる攻撃を受けた際には、事前に米国にイスラエルから通告があった。今回、ナタンズの核施設で爆発があった11日には、オースチン米国防長官がバイデン政権の高官としては初めてイスラエルを訪問した日。事前通告があったかどうかは微妙なところだろう。

 米国とイスラエルは10年前のオバマ米政権当時、イランの核開発を妨害するため、共同で「スタックスネット」というウイルスを開発し、ナタンズの核施設をサイバー攻撃、一時的に遠心分離機の稼働を停止させたことがある。この作戦は「オリンピックゲーム」と名付けられていた。3つ目は現在ウィーンで行われているイラン核合意への米復帰協議にどのような影響が出るかだ。

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