2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2021年4月28日

米、対イラン制裁解除のリストを提出

 こうしたペルシャ湾の軍事的な緊張の高まりの一方で、ウィーンでの核合意をめぐる協議では米側がこのほど、対イラン制裁の解除項目についてのリストを提示した。報じられるところでは、このリストにはイラン側が要求していた石油の輸出や銀行取引の再開などが含まれているという。

 イランはバイデン米政権との直接交渉を拒否し、欧州連合(EU)の仲介による間接交渉が行われている。協議は主に①米国の核合意復帰と対イラン制裁解除②イランの合意破りの是正が焦点。米側が制裁リストを提示したのは大きな進展だが、合意を離脱したトランプ前政権はテロ活動や人権などの分野で新たに1500を超える制裁を追加しており、制裁の解除は容易ではない。

 ロウハニ政権とバイデン政権は大統領選挙でイランに反米の強硬派政権を誕生させないという点では基本的には一致しており、革命防衛隊などの圧力をかわしながら協議を進める意向と見られている。だが、こうした両政権の思惑に反対しているのは保守強硬派だけではない。イランと敵対するイスラエルの動きも協議の行方を左右する重要なファクターとなるだろう。

 今月だけで3回にわたって書いてきたように、イスラエルとイランはこれまで、「影の戦争」と呼ばれる暗闘を激化させてきた。イスラエルによるものと思われる作戦にはイランの科学者の暗殺やナタンズの核施設への破壊工作に加え、イランの石油タンカーや船舶に対する攻撃などが含まれている。イランもイスラエルの民間船への報復攻撃などに出ている。

 22日には、イスラエル南部のネゲブ砂漠にあるディモナ原子力センターを狙ったと見られるミサイル攻撃が隣国シリアから行われた。同センターに被害はなかったが、イスラエルは直ちにダマスカス近郊を報復攻撃した。センターを攻撃したのはシリアの親イスラエル勢力だったとされる。

 また24日にもシリア沖でイランのものと見られる石油タンカーが無人機の攻撃を受け、3人が死亡したという。イランは経済制裁を避けてシリアに石油を密売しており、このタンカーもそうした密売船だったと受け止められている。イスラエルの無人機だった可能性が指摘されている。

 イラン核合意への米復帰協議が加速すれば、それに呼応した形で革命防衛隊やイスラエルによる交渉を妨害する軍事的な動きも活発化するという相関関係になっている。イラン情勢を見るには当面、この相関関係に注意しなければならない。

  
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