中東を読み解く

2021年4月14日

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 イラン核合意をめぐる交渉担当者のアラグチ・イラン外務次官は13日、同国が濃縮度60%のウランを製造することを国際原子力機関(IAEA)に通告したと発表した。中部ナタンズの核施設がイスラエルの作戦と疑われる攻撃を受けたことへの報復措置。核爆弾製造に近づく重大な決定で、米国は「深刻な懸念」を表明、フランスも非難した。緊張を高めるイランの思惑は何なのか。

(OLeksandr_Kr/gettyimages)

理論的には1週間で核爆弾レベルに

 トランプ前米政権が2018年に核合意を一方的に離脱し、制裁を発動して以来、イランは制裁を解除させるためのカードとして、段階的にウラン濃縮度を高めてきた。核合意で定められた当初の濃縮度3.67%から、4.5%、20%と上げ続けた。イラン当局者によると、1月以来、濃縮度20%のウランを55キロ製造したという。

 今回はその濃縮度を一気に60%にまで高める決定をしたわけで、すでに製造に着手したと伝えられている。核爆弾に使用するウラン濃縮度は90%だが、専門家の話として米ニューヨーク・タイムズが報じるところによると、濃縮度20%から90%にするには「1カ月以上」かかるが、60%からだと理論的には「1週間」で核爆弾製造レベルにまで引き上げることが可能だ。

 イラン側はあくまでも「平和目的」として、核兵器製造の意図を否定しているが、最高指導者ハメネイ師は「必要ならどんなレベルにも高める」と表明していた。このイランの決定に各国は批判的だ。特に11日にナタンズの核施設を攻撃したと疑われているイスラエルのネタニヤフ首相は「イスラエルを壊滅させるための核兵器保有は絶対に許さない」と強硬姿勢を示している。

 フランス大統領府も「重大な事態」とイランを非難。核合意への復帰と制裁解除に向け、間接的な交渉をイランと続けているバイデン米政権のサキ大統領報道官はイランの決定を「挑発的」と指摘、「交渉への真剣度に疑問を投げ掛けるもの」と批判した。

 イランが濃縮度60%のウラン製造に踏み切った理由は何か。ザリフ外相はナタンズの核施設が「イスラエルの対外特務機関モサドによる攻撃」(イスラエル公共放送)を受けた後、「シオニスト(イスラエル)への報復」を表明していたが、報復は制裁解除交渉に悪影響を与えるとして、実際には報復行動は取らないのではないかとの観測を呼んでいた。

 しかし、攻撃を受けたナタンズの核施設の損害が予想以上に深刻で、報復せざるを得なくなった可能性がある。イラン当局者の話として伝えられるところによると、遠心分離機数千台が完全に破壊され、濃縮活動に大きな支障が出る見通し。アラグチ次官は攻撃後、同施設に最新の遠心分離機を新たに1000台を追加設置すると明らかにしている。

 攻撃の状況についても、これまで、イスラエルによるサイバー攻撃で爆発が起き、電力系統を破壊された伝えられてきたが、爆弾が施設内に直接持ち込まれた可能性も浮上。イランの有力議員の1人は「イランは(モサドの)スパイ天国になった」として、施設の警備の責任を担う革命防衛隊を批判した。

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