2022年6月30日(木)

中東を読み解く

2021年4月14日

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イスラエルに圧力を掛けさせるのが狙い

 もう1つの理由はこうした核施設への攻撃が逆効果であることを明確にするとともに、イランとの交渉を頓挫させたくないバイデン政権に対し、「再び破壊工作が実施されないよう、イスラエルに圧力を掛けさせる狙いがある」(アナリスト)のではないか。

 この指摘のように、今回のナタンズの攻撃に関しては、「バイデン政権の沈黙」(ニューヨーク・タイムズ)が目立つ。サキ報道官は攻撃後の会見で「米国は一切関与していない。(施設爆発の)原因や影響について米国から付け加えるものはない」と距離を置く姿勢を示した。

 バイデン政権がイスラエルに行動を慎むよう望む背景もある。それはアフガニスタンからの撤退問題が喫緊の課題として控えているからだ。アフガンからの米駐留軍撤退は4月末までに実施することで、トランプ前政権はアフガンの反政府武装勢力タリバンと合意していた。

 しかし、バイデン大統領は14日に演説し、完全撤退の期限を米中枢同時テロの20周年に当たる9月11日まで先送りすることを発表することになった。タリバンの反発は必至で、米軍に対する攻撃が再開する恐れもあるなどアフガン情勢は重大な岐路に差し掛かっている。バイデン政権としては、こうした中でイランとイスラエルの緊張が高まれば、中東で2つの紛争と対峙することになりかねず、絶対に回避したいところ。イスラエルに自重を促さざるを得ない事情を抱えているわけだ。

再び船舶攻撃

 しかし、バイデン政権の思惑とは裏腹に、イスラエルとイランの緊張は一段と強まっている。イスラエルのメディアなどによると、イスラエル企業の保有する貨物船が13日、アラブ首長国連邦(UAE)沖のオマーン湾で、イランによる攻撃を受け、軽微な損傷を受けた。

 同船はフジャイラの港に入ったが、イスラエル国防筋はミサイルかドローンによる攻撃の可能性があると指摘している。同船はイスラエルの「ヘリオスレイ社」が保有する車両運搬船で、日本の船舶会社にリースされていたという。攻撃を受けた時はクウェートからUAEに向かう途中だった。

 イスラエルはこの2年間、イランの石油タンカーや貨物船に対する攻撃を仕掛け、10隻を超える船舶が標的にされたと伝えられている。イラン側も年初以来、3回にわたってイスラエル船を攻撃、公海上の“影の戦争”が激化していた。イスラエル側は13日の攻撃が、ナタンズの核施設への攻撃の報復だとの見方を示しており、両国の緊迫感が高まっている。

  
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