中東を読み解く

2021年5月11日

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爆撃によって亡くなった11歳の少年の遺体を運ぶパレスチナの人々(AP/AFLO)

 聖地エルサレムで5月10日、イスラエル治安当局とパレスチナ人との間で大規模な衝突が起きた。パレスチナの過激派組織ハマスは自治区ガザから200発ものロケット弾を発射、イスラエルも空爆で反撃した。今回極度に緊張が高まっているのはイスラエル警察がイスラムの第3の聖地「アルアクサ・モスク」の敷地内に突入し、“宗教戦争”の色彩を帯びることになったからだ。

キーワードは「エルサレムの日」

 “宗教戦争”激化の予兆はあった。イスラム世界は現在、ラマダン(断食月)真っ最中。イスラム教徒は日中の飲食を一切断つ荒行を行っているため、気が立ちやすいのと同時に、宗教心が高まる時期でもある。断食が終わる日没になると、開放感に包まれて家族や友人らが集まって談笑するのが一般的だ。

 エルサレムでもイスラム教徒は旧市街地のダマスカス門の周辺に集うのが恒例になっていた。だが、イスラエル当局は今年、ダマスカス門への立ち入りを禁止、これにパレスチナ人が反発し、連日のように衝突事件が続いてきた。10日の朝、厳戒態勢を取っていたイスラエル治安当局が「アルアクサ・モスク」に立てこもっていたパレスチナ人を排除しようと、モスクの敷地内に突入したことから大規模衝突に発展した。

 モスクが建つ場所はイスラムの預言者ムハンマドが天に昇ったと伝えられるところで、メッカ、メジナに次ぐイスラムの第3の聖地。モスクに近い岩のドームには、ムハンマドが天に旅立ったとされる大きな岩が残されている。このモスクに隣接してユダヤ教の聖地である「嘆きの壁」も位置しており、エルサレムが“係争の聖地”と呼ばれる所以だ。

 だが今回、イスラエルの警官隊は「アルアクサ・モスク」にあえて突入した。警察はパレスチナ人側から投石があったためと正当化しているが、ゴム弾を発射してパレスチナ人の排除にかかった。この衝突で、パレスチナ人330人、警官20人以上が負傷した。

 特筆すべきはこの日が「エルサレムの日」だったことだ。どんな日なのか。1967年の第3次中東戦争でイスラエルが東エルサレムを占領したことを記念するいわばイスラエルにとっての戦勝記念日だ。しかし、パレスチナやアラブ諸国側からすれば、戦争でイスラエルに敗れた屈辱の日である。多くのアラブ諸国がパレスチナ人の大義を忘れても、イスラムの聖地であるエルサレムをユダヤ人に奪われた日は忘れてはいない。

 ベイルートのアナリストは「ラマダン、アルアクサ・モスクそしてエルサレムというイスラム教徒にとって宗教的に大事な要素がユダヤ教徒に侵害された。イスラエルが“宗教戦争”を仕掛けていると見られて当然だ。パレスチナ人だけではなく、アラブ人に対する挑発であり、侮辱と受け取るイスラム教徒は多いだろう」と指摘している。

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