2024年4月26日(金)

中東を読み解く

2021年5月11日

分断のパレスチナ

 イスラエルとハマスの今後の戦況はどうなっていくのか。地元メディアなどによると、10日に始まったハマスや過激組織「イスラム聖戦」によるイスラエルへのロケット弾攻撃は200発を超え、イスラエルもハマスの軍事拠点や司令官の家など130カ所以上を報復爆撃した。パレスチナ側は子ども9人を含む24人が犠牲になった。

 イスラエル軍によると、ロケット弾200発の3分の1はガザ地区内に落ち、イスラエル領内に到達したもののうち90%は迎撃ミサイルシステム「アイアンドーム」で撃墜した。しかし、7発はエルサレム郊外に着弾した。エルサレム近くにまで攻撃を受けるのは2014年以来初めて。イスラエル軍はあらゆる選択肢を排除しないとしており、一部では地上侵攻作戦もあり得るとの観測も出ている。

 しかし、迎え撃つ肝心のパレスチナ側は分裂状態で、団結にはほど遠い。イスラエルと交戦するガザ地区のハマスと、ヨルダン川西岸を拠点とするパレスチナ自治政府は対立したままだ。5月22日に予定されていた評議会選挙(議会選挙)はアッバス自治政府議長が無期限延期を宣言したままだ。

 選挙延期の表向きの理由はイスラエルが東エルサレムで投票を認めない可能性があるというものだ。だが、実際には、アッバス議長の政党ファタハが選挙でハマスなどに負ける公算が大きいことが真の理由だったとの見方が強い。それでなくてもファタハは3つに分裂し、世論調査によると、アッバス派は約25%の支持しかない。

 議長選もアッバス氏はイスラエルの刑務所に服役中の過激派指導者マルワン・バーグーチ氏よりも人気がない。その背景には、アッバス指導部の汚職体質があると見られている。いずれにせよ、イスラエルとの戦いはハマスだけでは勝てない。西岸全体に燃え上がるインティファーダ(蜂起)が必要だろう。パレスチナの分裂が続いている状況ではイスラエルの横暴を止めることはできない。

  
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