パレスチナ・ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエル軍の衝突は17日、ガザ市の病院が攻撃を受け、数百人が犠牲になる事態に発展した。だが、イスラエル軍は強い国際非難にもかかわらず、ガザ侵攻に踏み切る構え。
侵攻部隊にはハマス戦闘員が罠をめぐらして待ち伏せ、酸鼻極める市街戦が想定される。侵攻の戦略目標と戦闘の行方を探った。
毒蛇の頭を切断せよ
イスラエル軍の正規軍は16万人だが、史上最多の予備役36万人が動員され、文字通り国家の総力を挙げての侵攻作戦だ。イスラエルはこれまで2009年と14年の2度にわたってガザに侵攻したが、あくまでもハマスを懲罰することが眼目で、ハマスの解体を狙ったものではなかった。だが、今回は本腰を入れて「ハマス抹殺」(ネタニヤフ首相)を狙っている。
それだけに1400人ものユダヤ人市民らが殺害されたハマス攻撃の衝撃は大きく、軍事作戦では将兵の人命尊重を最優先にするイスラエル軍の伝統は二の次とされているようだ。同様に、ハマスに拉致された人質約200人もハマス壊滅の犠牲になるのではないかとの恐れが広がっている。
現地からの情報や報道によると、戦時内閣で取り沙汰されている戦略目標は4点に集約される。1つ目はハマス政権の打倒と軍事力の壊滅、2つ目はガザからのイスラエルに対する脅威の除去、3つ目は人質解放、4つ目はイスラエル領土と国民の防衛、とされる。
ハマス政権の打倒については、具体的にはガザの指導者ヤヒヤ・シンワールと軍事組織「カッサム旅団」の司令官モハメド・デイフの2人の殺害だ。シンワールは7日のイスラエル攻撃を命じた人物で、イスラエルは潜伏場所を把握しているという。デイフはロケット弾攻撃など軍事作戦を指揮している。イスラエル軍当局者は「2人は〝死刑囚〟だ」と称し、殺害は絶対命題だ。