最悪のタイミングのバイデン訪問
バイデン大統領はネタニヤフ首相の要請を受け18日、イスラエルを訪問した。最大の目的はテロ組織から攻撃を受けた中東最大の同盟国への支持と連帯を示すためだ。
2月のウクライナ訪問に擬えられているが、病院攻撃で多数の犠牲者が出た最悪のタイミングでのイスラエル入り。大統領にとっては大きな政治的な賭けだ。
ネタニヤフ首相はバイデン氏の訪問で、地上侵攻への〝お墨付き〟を得たものとして作戦を堂々と推進することができると踏んでいるが、大統領にとっては「諸刃の剣」だろう。大統領の決断は来年の大統領選挙を見据えた国内世論を意識したものであり、米政治に影響力を持つユダヤ票やイスラエルを支持するキリスト教徒右派勢力の支持獲得に役立つかもしれない。これがプラス面だ。
だが、マイナス面もある。当初イスラエルに同情的だった国際世論は今や、「無差別爆撃で民間人を虐殺している」としてイスラエル非難に変わった。侵攻が開始されれば、さらに非難が高まるのは必至。それはそのままバイデン大統領や米国に跳ね返ってくることになりかねないからだ。
大統領訪問の地ならしで中東を歴訪したブリンケン国務長官は親米の大国サウジアラビアのムハンマド皇太子から冷たい仕打ちを受けた。14日にリヤドを訪問した長官は皇太子から待ちぼうけを食わされ、会談が実現したのは15日になってからだった。皇太子はイスラエルのガザ爆撃に不快感を崩さず、米国が仲介してきたサウジとイスラエルの国交樹立などは吹っ飛んでしまった。
バイデン大統領の訪問にはレバノンのシーア派組織ヒズボラなどイランの支援を受ける組織が参戦しないよう警告するという思惑も秘められている。大統領はすでに東地中海に空母2隻を展開させ、新たに海兵隊2000人を同地域に派遣した。だが、ヒズボラはイスラエルに散発的な攻撃を加え、交戦が続いている。イスラエル軍が地上侵攻し、ヒズボラが参戦すれば、大統領には危機を止められなかったとして非難が内外から湧き上がることだろう。