ハマスが10月7日にガザ地区境界でイスラエルに対し、数千発のロケット弾攻撃を開始するとともに一連の奇襲攻撃を仕掛けた。ハマスの今回の攻撃は、過去に類を見ない大規模なもので、最初の攻撃にハマスの戦闘員は1000人近く参加していたのではないかとイスラエル軍は推定している。なおも戦闘は続いており、パレスチナ、イスラエルともに多数の死者を出している。
米ニューヨーク・タイムズは10月13日に、米中央情報局(CIA)が先月末からハマスの脅威の高まりを示す2件の報告書をまとめていたが、バイデン大統領には伝えられておらず、10月7日の攻撃を具体的に予測する記述もなかったと伝えている。
CIAから情報がもたらされなくとも、イスラエルには情報収集能力が高いとされる諜報機関がある。モサド(イスラエル諜報特務庁)をはじめとするこれらの諜報機関は、長年、国家の存続に寄与してきた。
ただ、残念なことに、イスラエルの地元紙ハアレツ(Haaretz)によると、今回の攻撃前夜にガザ地区におけるハマスの攻撃に関する予兆を示す情報が寄せられ、シンベット(イスラエル公安庁)と軍が統括するアマン(イスラエル参謀本部諜報局)との間で情報が共有されて分析されたのだが、ささいな兆候だったため軍事演習と評価され、警告や部隊を増強するなどの対処がなされなかった報じている。
ハマスの情報伝達はローテク
ハマスの奇襲攻撃の兆候を見逃したイスラエルのモサドをはじめとする諜報機関の責任は重いが、ハマスは情報が漏れることを防ぐために、電話やインターネットは使わずに地下に潜って対面で協議したとみられている。
イスラエルの諜報機関は、ドローンによる監視やガザに張り巡らせたフェンスに設置されたカメラによる監視と、インターネットや電話の通信を傍受したり、スマートフォンに盗聴プログラムを仕掛けることでハマスの情報を得ていたが、こうしたハイテクに頼りすぎたのが仇になった形だ。