2024年5月18日(土)

デジタル時代の経営・安全保障学

2023年10月18日

開戦と同時にハクティビストも参戦

 最初のロケット弾発射から1時間も経たないうちに多くのハクティビスト達が参戦している。10月8日、イスラエル最大の英字紙「エルサレム・ポスト」はアノニマス・スーダン(Anonymous Sudan)というハクティビストによってサイトが一時的に閲覧不可能になっていると報じた。この他にも100を超えるWebサイトが大量に通信要求を送り込む単純な分散型のサービス拒否(DDoS)攻撃によって一時的に閲覧不可能な状態になっている。

 ハクティビスト(Hacktivist)とは自分たちの政治的、社会的な主義・主張をハッキングという形で示そうとする個人や集団のことである。今回のハマスの攻撃に賛同するハクティビストが次々参戦しているのだ。

 アノニマス・スーダンは、イスラエルの「アイアン・ドーム(Iron Dome)」と呼ばれる防空システムの緊急警報システム「レッド・アラート(Red Alert)」を停止させることにも成功している。「レッド・アラート」を麻痺させたとする主張はアノンゴースト(AnonGhost)というハマスを支援するハクティビストも主張しており、さながらハクティビストのハッキング・コンテストのような状態になっている。

 また、CyberAv3ngersというハクティビストは、Telegramチャンネルで、イスラエルとパレスチナ自治区の最大の電力供給会社「イスラエル電力公社」への攻撃が成功したと主張したが、すぐさまGroup-IBというセキュリティコンサルタント会社によって否定されている。Group-IBは、2003年にシンガポールに設立されたサイバー犯罪の調査を請け負うセキュリティコンサルタント会社で、今回のハマスの奇襲攻撃にまつわるサイバー空間の様子を捉えて情報発信している。

 こうしたコンサルティング会社やセキュリティベンダーが盛んに情報発信するのは、情報収集能力や技術力を示すことや社名の認知度をあげるのが目的で、こちらもハクティビストの活動同様に賑やかだ。

 Group-IBはTelegramに投稿された画像が、22年に活動していたランサムグループ「MosesStaff」によって盗まれたデータであることを突き止めて映像を公開している。ガザやパレスチナ自治区の電力はイスラエルに頼らざるを得ない状況で、イスラエル電力公社へのサイバー攻撃が成功したという偽情報を流すセンスが疑われるが、見えないサイバーの世界でも駆け引きが活発に行われていることを示す一例だろう。

セキュリティコンサルティング会社Group-IBの投稿(筆者提供) 写真を拡大

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