2024年6月14日(金)

WEDGE REPORT

2023年10月20日

 イスラエル軍広報官も8日、イランが計画や訓練に関与したとは言えない、との立場を示しており、米国同様、断定を避けている状況だ。確証がない中での軍事行動は、国際法違反との批判を招く。現在の曖昧な現状は、イスラエルによるイラン攻撃を抑止している。

誤解の多いイランとハマスの関係性

 では、実際のところ、ハマスが今回の攻撃を起こすに当たり、イランは背後から支援を与えたり、指示したりしていたのだろうか。

 結論からいうと、長い時間軸で見れば、イランがハマスの後ろ盾となり、軍事・財政支援を行ってきた形跡がある一方、今回の戦闘に限ってみれば、現時点でイランが指示した確証はない。

 そもそも、誤解が多いことではあるが、イランと非国家主体との関係は一様ではない。関与の程度にもばらつきがあるのである。

 非国家主体への支援を行うのは、イラン・イスラム革命防衛隊ゴドス部隊である。ゴドス部隊とは、革命直後の1979年5月に国軍のクーデター防止、および左派ゲリラへの対抗を目的として創設された革命防衛隊の諜報・対外工作を担う部隊である。

 ゴドスは、ペルシャ語でエルサレムを意味する。つまり、イランが「抑圧者」と見做すイスラエルと鋭く対立する組織である。

 ゴドス部隊は、「抵抗の枢軸」と呼ばれる代理勢力ネットワーク(俗に「シーア派の三日月」と他称される)を活用しつつ、イランの抑止力強化を図る。他方で、一口に「支援」といっても、その内容は、政治的認知の付与、ヒト・モノ・カネ等の資源の供与、軍事訓練、助言、聖域の提供等、多岐にわたると考えられている。

 「代理勢力」とはいっても、革命防衛隊の指示を従順に待つだけの受け身の存在というわけではない。各々の非国家主体は、一部例外を除き、自己決定権を持つ独立した武装勢力で、両者間に何か同盟関係を示す文書やMoU(覚書)があるわけでもないのである。

 革命防衛隊ゴドス部隊の活動の実態はベールに覆われているが、近年、それを隠さなくなっていることも事実である。2020年1月、革命防衛隊のハージーザーデ空軍司令官が演説した際、その背後には複数の代理勢力の旗が並べられた。

 並べられたのは、レバノンのヒズボラ、イエメンのアンサール・アッラー(通称フーシー派)、イラクの人民動員、パレスチナのハマス、シリアで活動するファーテミユーン旅団(主にアフガニスタン人から成る)とザイナビユーン旅団(主にパキスタン人から成る)であった(写真)。

2020年1月、代理勢力の旗の前で会見するハージーザーデ革命防衛隊空軍司令官。右から3番目がハマスの旗(出所:アル=アラビーヤ放送のXでのポスト写真を拡大

 イラン自らが誇示する通り、イランとハマスを含む非国家主体との間には長年の関係がある。ハーメネイー師自ら23年6月にハマスのハニーヤ政治局長とテヘランで会談したことも、こうした事実を傍証している。また、10月7日の攻撃以降、ライシ大統領がハニーヤ政治局長と電話会談(8日)した他、アブドゥルラヒヤーン外相が直接会談(14日)し、ハマスに寄り添う姿勢を鮮明にした。


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