米国とも太いパイプ
カタールの独自路線の真骨頂はイスラム勢力から敵視されている米国とも太い関係を築いている点だ。米国とは防衛協定を締結し、米軍の中東最大の基地はカタールの「アルウデイド空軍基地」だ。米国を後ろ盾に防衛体制を万全なものにするという〝小国の知恵〟だろう。
逆に米国にとってもカタールは便利な国だ。イスラム勢力との窓口として利用できるからだ。
その最たる例がアフガニスタンのイスラム組織タリバンとの交渉だ。カタールはハマス同様、タリバンにもドーハに事務所を開設させているが、米国は当地で21年のアフガニスタンからの米軍撤退に伴うさまざまな交渉を行った。混乱の中で撤収した米軍の軍属やアフガニスタン人協力者の一時避難先にも同国を使った。
カタールが独自路線を展開できるのは何と言ってもその資金力にある。ペルシャ湾に親指のように突き出す形のカタールの人口は僅か270万人。労働力の相当部分をインド人などの外国人に依存しているが、1人当たりの国民総所得は世界で第6位と高い。
同国の収入源は天然ガスと石油の生産だ。特に天然ガスの埋蔵量は世界第3位で、ウクライナ戦争でエネルギー不足が起こっている現状の中、カタールの重要度は増している。昨年はサッカーワールドカップ(W杯)の開催を成功させた。
だが、今回のハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃を機に、カタールが組織の指導者らを滞在させ、自由な生活を与えていることに対し、米議会などから非難と圧力が強まっている。米紙によると、連邦議員の1人は「カタールは米国につくのか、テロリスト側につくのか、選ばなければならない」と語っている。
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