2024年7月16日(火)

WEDGE REPORT

2023年12月1日

 以降、イラン製兵器を載せたイエメン行きの船舶が洋上で差し押さえられる事案が散発するなど、両者間の結びつきは深まってきた。イランは、フーシ派が派遣する「大使」を首都テヘランで受け入れるなど、政治的な後ろ盾ともなっている。

 とはいえ、フーシ派はイエメン社会に根差した土着の組織であり、単純にイランの「子分」というわけでもなく、その関係性に曖昧な点があることには充分な留意が要るだろう。実際、イラン外務省は、フーシ派による一連の攻撃への関与を否定している。

イランのハメネイ師が目指す「イスラエル包囲網」

 こうした中、米国が「抵抗の枢軸」の黒幕と見做すイランは、イスラエル軍がガザ地区へ行った軍事行動を「戦争犯罪」と呼びつつ、諸外国に対して対イスラエル包囲網を敷くことを呼びかけており、その動向が注目される。

 11月19日、最高指導者ハメネイ師が革命防衛隊航空宇宙軍の展示会を訪れた際、イスラーム諸国にイスラエルへの政治・経済的圧力を増すよう呼びかけた。その要旨は以下である。

*イスラーム諸国は、シオニスト政体への石油、エネルギー、貨物等の流れを断絶しなければならない。
*イスラーム諸国は、シオニスト政体との政治的関係を、少なくとも限られた期間、例えば1年間やその前後絶つべきである。
*もし、シオニスト政体の犯罪行為を止めたいのであれば、それはイスラーム諸国が果たすべき義務である。

 同様の主張は、ライシ大統領によっても繰り返しなされている。同大統領は11月11日、イスラーム協力機構(OIC)・アラブ連盟緊急共同首脳会合において、イスラーム諸国にシオニスト政体とのあらゆる政治・経済的関係の断絶を求めた。

 11月26日にはハメネイ最高指導者事務所は、X(旧Twitter)に「どのイスラーム教国が殺人マシーン(注:イスラエルを指すと考えられる)のガスタンクを満たしているのか?」との解説画像を掲載し、イスラエルにエネルギーを供給する国々を実名で晒した(図表2)。

 この解説画像は、あくまでもイスラエルの対外貿易についての事実を提示しているだけではある。このため、フーシ派の動きとイランの動きが連動しているかは不明である。しかし、現下のタイミングを踏まえれば、イランがイスラーム諸国にイスラエルへのエネルギー・生活物資供給を途絶させたいとの含意が読み取れよう。


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