自前でも稼ぐハマス
前回、カタールの資金援助によってハマスが軍備増強を図った背景を書いたが、ハマスは自前でも外国で企業を経営したり、投資をするなどしたりして巨額の戦争資金を稼いでいたことがニューヨーク・タイムズなどの調査報道で明らかになった。ハマスがなぜ戦争を継続できるかの理由の1つであり、2人の逃亡にも資金的な裏付けが十分にある。
報道によると、イスラエルの特務機関モサドはハマスのテロ資金を追跡する特別チームを発足させて調査。15年までにハマスの「秘密投資ポートフォリオ」をまとめるまでに至った。その後ハマスの経理担当者が作成したカネの出入りを記した元帳へのアクセスに成功、大きな突破口となった。
それらによると、ハマスはスーダンやトルコ、アルジェリアで鉱山開発から養鶏場、道路土木会社、不動産デベロパー、株式投資などの企業活動を行い、アラブ首長国連邦(UAE)には2つの高層ビルも所有。最盛期の資産は5億ドル(約700億円)にも上り、12年から18年まで年間1000万ドルから1500万ドルの資金をガザに還流させた。
ハマスはこれらの資金も10月7日の奇襲攻撃のための軍備増強に使ったとみられている。ネタニヤフ首相は15年当時、特別チームの責任者からハマスの経済活動を阻止するよう進言されたが、関心を示さなかったという。イランの核開発対応に集中していたようだが、首相の対応遅れが招いた結果はあまりに大きい。