2024年12月22日(日)

教養としての中東情勢

2023年12月14日

 パレスチナ自治区ガザ情勢は、イスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘が全域に広がり、ガザ住民らの死者は1万8000人を超えた。イスラエル側が戦争の目標としているハマス指導者の殺害はいまだ実現していない。そうした中、ハマスが戦闘を続行できるのはカタール資金の流入を容認するなどイスラエル自らがハマスを育て上げたからだ、との衝撃的な見方が明らかになってきた。

終わりの見えないイスラエルとハマスの衝突(Israel Defense Forces/ロイター/アフロ)

すべては中東和平をつぶすため

 10月7日のハマス奇襲攻撃で始まった戦闘は2カ月以上が経過し、今や第二段階に入った。イスラエル軍は当初、ガザを南北に分断し、北部の攻略から始めた。しかし、奇襲攻撃を立案、命令したとされるハマスのシンワル指導者や軍事部門カッサム旅団のデイフ司令官ら最高幹部は発見できず、12月初めからは戦車など地上部隊を南部へ侵攻させた。

 軍は南部最大の都市ハンユニス中心部まで進撃、同地のトンネル施設にシンワル指導者らが潜伏しているとみて攻撃を強化している。ハマスの戦闘員は約2万5000人だが、これまでの戦闘で約6000人が殺害されたもよう。イスラエル軍兵士の戦死も100人を超えた。軍は数百人を捕虜にし、投降を呼び掛けているが、ハマスの抵抗は続いている。

 ハマスがなお戦闘力を持続しているのは、この戦争に向けて武器・弾薬や食料、水などを大量に地下に蓄えているからだ。武器や食料を購入、準備できたのはペルシャ湾岸の富裕国カタールがハマスへ巨額の資金を送り続け、それをイスラエル自身が容認してきたことが背景にある。イスラエル自らがハマスを強大な組織に育て上げたとされる所以だ。

 なぜイスラエルはハマスの軍備強化になるようなカタール支援を認めたのか。「すべてはパレスチナとの中東和平をつぶすためだった」(ベイルート筋)。ニューヨーク・タイムズや地元メディア、ベイルートからの情報などによると、計16年間も権力を掌握してきたネタニヤフ政権はパレスチナ勢力が一枚岩となって和平交渉を要求してこないようパレスチナの「分断統治」を画策した。


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