2024年12月2日(月)

世界の記述

2023年12月1日

 ガザ地区のイスラム武装組織ハマスがイスラエルを襲撃した10月7日以降、欧州各国でさまざまな緊張が高まっている。中でも、ユダヤとイスラム両教徒の人口が欧州でもっとも多いフランスでは、戦争や人質、人種差別や反ユダヤ主義の反対を訴える双方のデモ活動が繰り広げられてきた。

 中東とは地理的に離れたフランスで、何が起きていたのか。なぜフランス人は、この問題に敏感に反応するのか。パリ市内の異なるデモに参加してみた。

フランスでは、主義の異なるデモが展開されている(筆者撮影、以下同)

禁じられた親パレスチナのデモ

 フランスには、欧州最多約500万人のイスラム教徒がいるといわれている。一方、米国とイスラエルに次ぐ世界最大規模のコミュニティーを持つユダヤ教徒の数は、約50万人と推定される。

 ハマスのイスラエル襲撃で、これまでに少なくとも40人のフランス人が殺害されている。当初は、世界中がハマスを非難し、イスラエルを擁護する報道が見られた中、フランス政府も、ユダヤ人に対する町中での人種差別攻撃などを危惧していた。

 ダルマナン内相は、「公共の秩序を乱す恐れがある」との声明を発表し、パレスチナやハマスを支持するデモを禁止した。しかし、パレスチナの旗を持つ市民がパリ市内で抗議し、10人が逮捕された。10月12日、マクロン大統領は民放を通じ、「イスラエルの悲しみを分かち合う」と述べ、ハマスのテロリスト行為を非難した。 

 その後、イスラエルによるガザへの報復攻撃が進む中、フランス政府は、親パレスチナ派デモの禁止を継続させることもできなかった。10月22日、パリ市内の共和国広場には、約3万人(主催者発表、警察発表はその半数)のパレスチナ支持者が怒りの声を上げた。

パリの共和国広場で行われた親パレスチナ派のデモ

 〈パレスチナの子供たちへの殺戮を止めろ〉、〈虐殺、フランスは共犯者〉、〈子供たちへの爆撃は、自衛行為ではない。パレスチナを解放せよ〉、〈ネタニヤフ(首相)テロリスト、マクロン(大統領)共犯者〉、〈メディアは、反パレスチナ〉——。さまざまな抗議文を書いたプラカードを持つ参加者や、パレスチナの旗を振り続ける若者たちが共和国広場を埋め尽くした。


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