パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの指導部や戦闘員の多くがイスラエル軍の制圧した北部を抜け出し、住民が避難する南部にすでに逃走している疑いが濃厚になってきた。イスラエル軍はハマスの司令部があるとしていたガザ最大のシファ病院に突入したが、軍事利用の証拠を見つけられず、焦りを強めている。前線は今後南部に移るのは必至で、戦争は第二段階に入った。
思惑外れた掃討作戦
ガザ北部にハマスの拠点があるとにらんでいたイスラエル軍は北部と南部を分断し、民間人を攻撃しているとの国際的な非難を避けるため、北部の住民を南部へ避難させてきた。これまでに住民ら約70万人が南部に移動、北部にはなお25万人ほどが残留しているとみられている。
イスラエル軍は北部を戦車部隊などで完全包囲し、ハマスのトンネル網を壊滅するため徹底的に空爆、北部の建物の7割近くが破壊され、がれきと化している。特にイスラエルが標的にしていたのがシファ病院だ。イスラエル側は病院の地下にハマスの司令部が置かれ、ここから10月7日のイスラエル越境攻撃が指揮されたとみていたからだ。最大の軍事的な攻略目標だった。
イスラエル軍は4万人の兵力で病院を包囲した。地元の情報などによると、イスラエル軍は病院に到達するまでのハマスとの戦闘で、戦闘員約1000人を殺害し、多くのトンネル網をつぶした。
イスラエル軍側にも戦闘で55人の死者が出た。ハマスは病院を軍事利用していることを否定していたが、イスラエル軍はハマス側が病院に立てこもるなどして激しく抵抗するとみていた。
しかし、イスラエル軍が11月15日に病院に突入した時には、抵抗はなく、銃撃戦も起きなかった。勢力4万人ともいわれたハマス戦闘員の姿はなかったのである。