2024年5月14日(火)

世界の記述

2023年12月1日

 このデモに参加した唯一の政党は、極左「不服従のフランス」。ジャン=リュック・メランション党首はX(旧ツイッター)で、イスラエルを訪問していた国民議会のブロンピベ議長に対し、「殺戮を推進している」と書き込み、フランスのイスラエル支持を非難した。

 また、同党のマニュエル・ボンパール議員も、ブロンピベ議長がXに掲載したイスラエル軍との写真を批判。「……議長は、戦争犯罪を犯す軍隊への支持を示すべきではない」と記し、「フランスは、即時停戦、人質解放、ガザ包囲中止を求めるべき」と訴えた。

反ユダヤ抗議に参列した極右ルペン

 フランスでは、10月7日から1カ月の期間に、反ユダヤにまつわる行為が1000件以上、報告されていた。内務相によると、その数は、通常2年間で累積されるものだという。この事態を警戒し、上下院の議長やダルマナン内相らは、反ユダヤ主義を否定するデモ行進を呼びかけた。

 11月12日、パリで10万5000人、その他の都市で数万人が参加し、フランス全土で合計18万2000人(内務省発表)が反ユダヤ主義に抗議するデモに参列した。前述の極左「不服従のフランス」は、「ガザ市民虐殺を支持しているデモ」と非難し、参加を拒否。国内で批判の的になった。

 そんな中、極右「国民連合」のマリーヌ・ルペン党首が姿を現したことが、この日の最大のニュースだった。反ユダヤや移民排斥のイメージを植え付けてきたルペン党首は、「われわれは、いるべき場所にいる」と述べ、国民やメディアの意表を突いた。 

 反ユダヤ問題の専門家、マルク・ノベル氏によると、過去20年間でフランス国外に移住したユダヤ人の数は6万7437人に上るという。その理由について、同氏は、『フィガロ・マガジン』に対し、こう語っている。

 「そのうちの半数は恐れによるものだが、それは10月7日に起因するものではない。その恐怖は、2000年10月に始まった第二次インティファーダに遡る。イスラエル・パレスチナ紛争の緊張が高まると、フランスで反ユダヤ攻撃が増加するという決まりがある」

 デモの先頭には、ニコラ・サルコジ氏やフランソワ・オランド氏といった元大統領らが〈共和国のため、反ユダヤ主義のため〉と書かれた横断幕を持って行進した。参加者たちも、〈反ユダヤ主義、人種差別、極右に反対〉と書いた旗を持ちながら歩いていた。ここに集まった市民が、ユダヤ人だけでなかったことが重要視された。

エリザベート・バダンテール氏が反ユダヤ主義の抗議について語った仏週刊誌『レクスプレス』

 フェミニスト作家で哲学者のエリザベート・バダンテール氏は、これまでイスラム主義には口を閉ざしてきた。しかし、「ユダヤ人でない人々の反ユダヤ主義抗議の声は、貴重であり、必要不可欠だ」とフランス週刊誌『レクスプレス』に語っている。

 また、バダンテール氏は、昨今、社会の分断が進むフランスで、民主主義が弱体化している現状について、独特な視点を示していた。

 「ふたつの理由がある。ひとつは心理的、もうひとつは政治的。前者は、われわれの超個人主義。『私が最初』で、その他は二の次。集団の目的を考える前に、個人の喜びを考えている。後者は、法に対する軽視。(中略)……子供たちに法の尊重を十分教えてこなかった」


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