日本は多元主義を発信せよ
親パレスチナ支持者も反ユダヤ主義に抗議する人々も、価値観こそ異なれど、彼らの願いには共通するものがある。殺し合いを止めろ、ということだ。彼らはおそらく、それだけを祈っていた。このシンプルな状況を複雑にしているのは誰なのか。それは、人間一人ひとりのエゴイズムにほかならない。
3つのデモを観察しながら見えてきたことは、敵か味方かで正義を捉えようとする物事の難しさだ。そこには、人種、民族、宗教など、複雑に絡み合う要素はあるが、それ以上に利権争いを繰り返す各国の政治家たちが求める「白か黒か」の二者択一に、多大な過ちがあることは間違いない。
人間は、アイデンティティを持ちたがる生き物だ。親パレスチナ支持と反ユダヤ主義抗議については、フランス全土で大規模なデモとなった。しかし、中立な平和デモに参加した人々の数は、圧倒的に少なかった。言わば、イスラエルやガザで起きている殺し合いに対し、「白か黒か」の二元論をなくした世界には、あまり興味を示していなかったように見える。
日本は、どのようなアイデンティティを持っているのだろうか。欧米社会とは、歴史も宗教も異なる中で、米国や欧州のような二元論主義にこだわるべきなのか。パリで行われた平和デモのように「人命第一」を貫くならば、日本はむしろ独自の多元主義を世界に発信していくべきではないだろうか。
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