平和を訴える沈黙のデモ行進
パリでは翌週の11月19日、パレスチナもイスラエルも敵対視しない「もうひとつの声」をスローガンに掲げた平和デモが行われた。参加者は、女優のイザベル・アジャーニ氏やエマニュエル・ベアール氏、元文化相のジャック・ラング氏らを含む、約600人の芸能人や文化人が集まった。
普段のデモ行進とは違い、参加者は文字のない白い横断幕や旗を掲げ、無言のまま約2.5キロメートルの道を練り歩いた。これはイスラエル側でもパレスチナ側でもなく、殺戮や暴力に反対するための「祈り」を意味するものだった。
元工学者のディディエ・プル氏(79歳)は、デモの先頭付近を歩きながら、フランスの外交に対する不満を口にしていた。
「国民議会の議長がイスラエルに渡り、無条件で極右のイスラエルを支持したフランスは間違っている。ハマスはテロ行為をしたかもしれないが、彼らの領土が長年、イスラエルに脅かされてきたことも事実。私はとにかく、停戦を願っている」
某アジア国のフランス大使館に勤務経験がある元外交官、ロマン氏(69歳)は、「ウクライナ戦争も含め、すべての戦争が停戦に向かうべきだ」と主張。「日本も含め、民主主義国家はまだ未成熟で、必ずしも理にかなった行為をしているとは言えない。私は、宗教や人種差別の反対を求めてデモに参加している」と話した。
約2時間続いたこのデモ行進は、最後まで沈黙が保たれた。アラブ世界研究所を出発し、クリスマスの装飾が始まる市内中心のデパートを抜け、ユダヤ芸術歴史博物館を通過した。多くの若者たちは、ショッピングに夢中だった。しかし、振り向くと、このデモに20代と30代の若者の姿は、ほとんど見受けられなかった。