ウォールストリート・ジャーナル紙の12月19日付社説‘The Houthis, Iran and U.S. Deterrence’が、フーシ派による紅海での船舶攻撃に対して米国が結成した多国籍軍による作戦の成否は米軍にかかっているが、フーシ派やその後ろ盾のイランは、バイデン大統領が大統領選挙の年に紛争のエスカレーションを恐れているとみなしているので果たしてフーシ派の攻撃を阻止出来るのか、と疑問を呈している。要旨は次の通り。
オースティン米国防長官は、イスラエルで「イランが支援するフーシ派による商船への攻撃を止めされなければならない」と語ったが、一体、どうやって止めさせるのか。米国は、「全ての国の航行の自由」を守るとして、紅海で少なくとも10カ国からなる多国籍軍による「繁栄の守護者作戦」を開始した。この多国籍軍には、オランダ、スペイン、カナダが参加しているが、中東からはバーレーンのみが参加した。
このような努力は、世界の貿易量の10%が紅海経由であることを考えれば意味がある。同盟国と協力することは良いが、多くの参加国はまともな海軍を持っておらず、現実には作戦の成否は米国の軍事力と政治的意志にかかっている。
既にフーシ派とイランは西側の利益にダメージを与えるという目的を達成している。つまり、政治的、軍事的なコストを掛けずに海上交通の保護のために西側の貴重な海軍力を割かせている。
オースティン国防長官の最後通牒が何を意味するのかが重要である。長官の警告にもかかわらずフーシ派とイランが攻撃を止めなかった場合、どうするのか。米国はフーシ派のミサイル基地や貯蔵庫を攻撃して報復するのであろうか。米国は、イランの聖職者達に(このような行動は)自分達の軍事施設や核施設を危険にさらしていると警告したのであろうか。
この問題の本質は、世界の「ならず者国家」に対して米国の抑止戦略が失敗していることに起因している。ロシア同様、フーシ派とイランは、バイデン大統領は大統領選挙の年に再び国際的な混乱の発生が新聞の見出しになることを恐れており、ともかく、紛争のエスカレーションを避けようとしているとみなしている。
このような対応は、ウクライナ紛争で既に失敗している。ウクライナ紛争は、ますます膠着状態に陥っており、中東で戦争が始まることを止められなかった。