ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙の12月3日付け社説‘About Those Non-Terrorist Houthis’は、フーシ派が商船を攻撃し、それを阻止した米艦も攻撃されたのは、バイデン政権がフーシ派のテロ団体指定を外したからであり、バイデン政権の抑止戦略の新たな失敗だと批判している。要旨は次の通り。
イランの代理勢力は、引き続き中東における米軍のプレゼンスへの脅威である。最新の脅威は、イエメンのフーシ派からもたらされた。12月3日、フーシ派は紅海を航行中の商船3隻を攻撃し、米海軍の軍艦が自艦の自衛のために対応した。
米中央軍によれば、同日、駆逐艦カーニーが商船からの救援要請に対応したが、同艦は、自衛のために2機のドローンを撃墜し、負傷者はいなかった。AP通信によれば、フーシ派のスポークスマンは攻撃を認め、「イスラエルがガザの兄弟達に対する攻撃を止めるまでイスラエル船が紅海を航行するのを阻止し続ける」と発言した。
武器の供給と訓練をイランに依存しているフーシ派は、明示的か黙示的かに関わらず、イラン革命防衛隊(IRGC)の許可無しにこのような攻撃を行ったはずがない。今回の出来事は、イランの代理勢力による米軍を含むイスラエルの同盟者に対する嫌がらせの一環だ。
バイデン政権は発足した直後にフーシ派を外国テロ団体のリストから除外した。これはバイデン政権のイランとの関係改善のためのイニシアティブの一環であった。われわれは、それがどういう結末をもたらしたのか知ることになった。
最近、カービー米大統領府報道官は、フーシ派を外国テロリスト団体のリストに再掲載するかもしれないと述べたが、この警告によりフーシ派が米国とその同盟国の船舶を攻撃することを牽制しようとしたのならば、その試みは失敗に終わった。
フーシ派は、紅海の重要なシーレーンにとり深刻な脅威となっている。遅かれ早かれ、フーシ派のミサイルが商船を沈めるであろう。そして恐らく、米海軍将兵を傷つけるだろう。
これはバイデン政権の抑止戦略の失敗の例である。バイデン政権は、ハマスとイスラエルの衝突が中東全域に拡大するというエスカレーションを恐れて、イランの代理勢力に対して形だけの対応以上に反撃することに消極的である。しかし、事態はエスカレートしており、イランがその中心にいる。
* * *
WSJ紙は、イランとその代理勢力に対して米軍の断固とした姿勢を示さなければ、彼らによる挑発行動がますますエスカレートし、いずれ米側に大きな被害が生じると主張し、バイデン政権のイランとその代理勢力に対する対応が手ぬるいと批判を続けている。他方、シリアとイラクでのイランの代理勢力に対する米軍の反撃パターンを観察すると、恐らく、現地の米軍は、米側に人的被害が生じない限り報復攻撃は行わないというROE(交戦規則)に縛られているのであろう。