2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年12月25日

 WSJ紙の言うとおり、米側が強硬な対応をするとイランとその代理勢力は怯むかも知れない。2020年にトランプ政権が、突然、革命防衛隊(IRGC)のソレイマニ将軍を暗殺するとその後、イランは大人しくなった。

 しかし、報復の連鎖に陥り、衝突が拡大するリスクもある。もっとも、イラン側も米軍との全面対決は望んでいないのでどこかでブレーキは掛かるはずである。

 16年にフーシ派は、地対艦ミサイルで米艦を攻撃したが成功せず、逆にフーシ派のレーダー基地が破壊されているが、同時期、アラブ首長国連邦(UAE)が豪州からリースしていた最新鋭の高速輸送艦は大破しているので、一般商船がこのミサイルで狙われたら、沈没してもおかしくない。しかし、今回、フーシ派は、主にドローンを使っているようだ。

 ドローンでは、液化天然ガス(LNG)運搬船なら別だが、一般商船に対しては操舵室にでも命中しない限り大きなダメージは与えられないであろう。また、フーシ派は、イスラエルの船を襲うとしていたが、9日にはイスラエルに向かう船を攻撃すると攻撃対象を拡大した。フーシ派は、紅海の安全航行を妨げて国際社会に圧力を掛けようとしているのであろう。

過去の行動から見えること

 イラン・イラク戦争末期、イラクは、ペルシャ湾の奥から積み出されるイラン原油を運ぶタンカーを航空機で攻撃してイランは経済的に大きな損害を被った。しかし、イラクはパイプラインを用いて原油を輸出しているのでイランは直接報復が出来ず、代わりに、ペルシャ湾内を航行するサウジアラビアやクウェート等の第三国の船舶に対する攻撃を始めた。これらの国と原油輸出の混乱で困る国際社会に対して、イラクがイランの原油輸出を邪魔しないようイラクに対して圧力を加えることが攻撃の意図だったと言われている。

 フーシ派の後ろ盾のイランのこの過去の行動を考えると、イスラエルの船に紅海を利用させないと言いつつ、フーシ派の真の狙いは、やはり、国際社会に圧力を掛けて、彼等がイスラエルに圧力を掛け、イスラエルのハマス攻撃を止めさせることにあるのではないだろうか。

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