2024年4月29日(月)

教養としての中東情勢

2024年1月5日

 イスラエル軍とパレスチナのイスラム組織ハマスのガザ戦争は〝第5次中東戦争〟への危機をはらみながら新年を迎えることになった。中東全域に緊張が高まっているのはイスラエルがシリア駐在のイラン革命防衛隊の将軍やベイルート在住のハマス政治局副代表らを相次いで「暗殺」、これにイランやレバノンのシーア派組織ヒズボラが報復を示唆しているためだ。

死者数はイスラエル建国以来最悪に

2024年1月1日、イスラエルのテルアビブで行われた葬儀で、ガザで死亡したイスラエル兵を悼む友人と家族(ロイター/アフロ)

 2023年10月7日のハマスの攻撃で始まったガザ戦争はイスラエルの無差別攻撃でパレスチナ人住民らの死者は2万2000人を超えた。これには崩れた建物の下に埋まっている行方不明者7000人やイスラエル側の死者1200人は含まれていない。戦闘で死んだハマス戦闘員数千人とイスラエル兵約170人を合計した犠牲者数は3万5000人を超え、今後も増えるのは必至。

 ニューヨーク・タイムズなどによると、イスラエル建国直後に起きた第1次中東戦争(1948年)から第4次中東戦争(73年)までのそれぞれの戦争の死者は1万5000人から1万9000人。82年のレバノン戦争での死者は1万8000人弱。今回のガザ戦争の死者はこうした歴史的な大戦争よりもはるかに多い。

 数の上ではとっくに事実上の〝第5次中東戦争〟と言えるだろう。しかもパレスチナ住民の犠牲者の70%は女性と子どもというのは悲劇的だ。

 だが、ガザ戦争が終息に向かう兆候は全くない。イスラエルのネタニヤフ首相は米紙への寄稿で、戦争目的として「ハマスの壊滅」「ガザの非武装化」「パレスチナ人社会の非過激化」挙げ、「誰もわれわれを止めることができない」と戦争続行を宣言。イスラエル軍のハレビ参謀総長は「もう数カ月かかる」と長期化を明らかにし、ガザ中部と南部を激しく攻撃している。


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