220万人もの住民を移住させることなど不可能と思われるが、イスラエル紙によると、ネタニヤフ政権は水面下で移民先を物色し、アフリカの某国とは実際に交渉しているという。労働力不足のサウジアラビアも候補地の1つとみられている。
これまでにも政府の情報部門で、エジプトのシナイ半島に住民を追放する秘密計画を策定していたことが明らかになっており、ネタニヤフ政権がこうしたパレスチナ人の「追放」を検討しているのは確かなことだろう。「民族浄化」との批判が出る所以だ。
戦後のガザ統治問題では、首相の占領続行に対し、米国はパレスチナ自治政府に委ねるよう求めて対立。穏健派のガラント国防相が最近、双方の間を取ったような新提案を公表した。ガザの境界はイスラエル軍が管理し、内政はハマスと関係ないパレスチナ人が運営、それを多国籍軍が監視するという提案だ。
気になる「調査委員会の行方」
もう1つ、ネタニヤフ政権を揺るがす難題がある。軍がハマスの奇襲攻撃を阻止できなかった原因を究明する「調査委員会」の設置問題だ。イスラエル紙によると、1月4日の閣議で、ハレビ軍参謀総長が設置を提案したのに対し、右派の閣僚らが猛反対し、激しい応酬になったという。
この際、首相が参謀総長への批判を放置したことにガンツ氏が激怒、「国の結束か、政治をもてあそぶのか、どちらかを選べ」と首相に迫った。首相が批判を制止しなかったのは自身も委員会設置に反対だからだ。調査で首相の治安対策の不手際や怠慢が明るみに出るのを恐れているためだろう。
ガンツ氏は戦時内閣からの辞任も視野に入れ始めたとみられており、権力にしがみ付く首相の振る舞いが政権の崩壊を招くかもしれない。イスラエルは戦争拡大の緊張が高まる中で、政治危機も深まってきた。