連立政権に対する支持率も、日を追うごとに低下しつつある。
イスラエルのニュース番組「NEWS 12」が去る12月18日実施したアンケート調査で、「ネタニヤフ氏とガンツ野党党首のどちらが首相としてふさわしいか」を視聴者に聞いたところ、ネタニヤフ支持が27%だったのに対し、ガンツ支持が45%と大きく上回った。現地紙「マリーブ」が去る12月15日に発表した世論調査でも、「ネタニヤフ支持31%、ガンツ支持51%」となり、いつ退陣に追い込まれてもおかしくない状況が続いている。
米国マスコミでも、ネタニヤフ政権に対する批判が高まってきた。
有力電子メディア「Politico」は、中東情勢に精通した外交専門記者による最新コラムで、以下のように厳しい論評を掲げている:
「米政府は、対イスラエル支援のみならずパレスチナ人道支援も重視する立場だが、ネタニヤフ氏は超右翼の二人の閣僚に首の根っこを押さえられているため、身動き取れない状態に追い込まれている。実際、この二人が今、連立政権を飛び出したら、たちまち政権崩壊は避けられず、政策のかじ取りを誰がしているのかも定かでないありさまだ……これも、超右翼や強硬な宗教組織指導者ににじり寄ってでも政権にしがみつこうとしてきた首相の身から出たサビであり、同情の余地はまったくない……その一方、彼はこれまで通り極右勢力におもね、ガザでの戦闘を長引かせればするほど、首相の座にとどまることができるという皮肉な結果となっていることも事実だ」
スウィングステートに影響する可能性
ただ、バイデン大統領にとって気がかりなのは、ネタニヤフ政権がこのまま米政府の主張に耳を貸さず、ガザでの戦闘で民間被害も拡大し続けた場合の11月大統領選挙への影響だ。
すでにニューヨーク、ロサンゼルス、ワシントンなどの主要都市では、一部の学生、市民組織による反イスラエル抗議集会、バイデン政権にパレスチナ人道支援を求めるデモなどが散発的に伝えられている。
その中で、バイデン再選委員会がとくに重視しているのが、ミシガン州といわれる。16年、20年選挙と同様、今回も勝敗のカギを握るといわれるネバダ、アリゾナ、ジョージア、ペンシルベニアなどとともに「注目の6つの接戦州」の一つで、もし、バイデン氏がミシガン州を落とすことになった場合、致命的ともなりかねない。
実際に同州では、16年選挙でトランプ氏がわずか0.2%の僅差、20年選挙でバイデン氏が2.8%差で勝利したことが、最終的に当落の重要な決め手ともなった。
ところが、そのミシガン州はアラブ系有権者多数が居住する州としても知られており、最近も、ガザ戦闘の激化を憂慮するアラブ系地方議員や経済人がイスラエルの肩を持ち続けるバイデン政権への批判を強めつつある。
今月1日、CNNテレビが行った世論調査結果によると、ミシガン州では有権者の49%が「バイデン政権はイスラエルに偏りすぎている」と回答したことが明らかになった。また、同じ接戦州のジョージア州でも46%が同様の回答をしたという。
再選めざすバイデン大統領は今まさに、外交と国内政治の板挟みに直面し、苦渋の選択を迫られようとしている。