国家か非国家か、二者択一ではない
第二圏域からは、ロシアや中国のように、権威主義体制を強める国が現れ、第一圏域との対立の構図が深まった。第一圏域では、こうした国に対処するため、国家の枠組みを強固なものにして対決に勝利しようとするので、国家の役割は低減するどころか、増大している。大国間競争の中では、国家の役割を再認識せざるを得ない。
また、第一圏域に属する国の多くが、自らの問題に対処するために苦闘している。これらの国にとって製造業の時代が過去のものとなる中、どのようにして国民の広い層に経済的利益を及ぼすのか。低成長かつ二極分化の中、不満を募らせる国民からの政治的支持をどのように確保し、社会の分断を回避するのか。国家の役割が低減しているというより、国家の枠組みの中でそれらの課題に苦悩している。
まとめて言えば、国家の制度が弱いところでの非国家主体の跋扈、大国間競争の激化による国家の役割の増大、国家の枠組みの中での国内的課題を巡る苦悩といういくつかのことが同時に起こっているのが現状と見るべきであろう。国際関係の主役が国家か非国家主体なのかという二者択一のゼロサム的枠組みで見るのでは大事なことが抜け落ちてしまう。