2024年12月5日(木)

教養としての中東情勢

2024年2月20日

 イスラエル軍とパレスチナのイスラム組織ハマスとのガザ戦争は最終決戦地、南部ラファをめぐる攻防に移る一方、イスラエルのネタニヤフ首相は米国をはじめとする国際的な停戦圧力を拒絶、「完全勝利」まで戦闘を続行する姿勢を一段と鮮明にしている。なぜ首相はこうまで頑ななのか。政治生命を賭けた首相の粘り腰の背景を探った。

ネタニヤフはなぜ、戦争を続けるのか(ロイター/アフロ)

国際社会のイスラエル包囲網

 ガザ戦争が始まってからすでに4カ月以上が経過した。イスラエル軍は北部ガザ市、南部の最大都市ハンユニスを攻略、避難民ら約140万人が身を寄せるエジプト国境の都市ラファに肉迫している。

 国連当局者はラファへの本格的な攻撃になれば、数千人が死傷するとみている。すでにガザ側に2万8000人以上の犠牲者が出ており、さらなる「虐殺」の恐れが高まっている。

 こうした状況にバイデン米大統領は「イスラエルの軍事行動はやりすぎ」「住民の安全を確保しないで攻撃すべきではない」「停戦するよう圧力をかけている」などとラファ攻撃に反対を表明。耳を貸そうとしないネタニヤフ氏を側近との会話で「ろくでなし」と罵倒した情報までリークさせ、イスラエルの攻撃を思いとどまらせようとしている。

 批判を強めているのは米国だけではない。アラブの大国サウジアラビアのムハンマド皇太子はこのほど、開戦以来5回目の中東訪問となった米国のブリンケン国務長官と会談、その直後アラブの有力国指導者らと会合を開催、イスラエルに対し自制を求めた。英仏独や豪州、カナダなどもイスラエル批判のトーンを高め、国際社会からの「イスラエル包囲網」が強まった格好だ。

 しかし、ネタニヤフ首相はハマス壊滅という「完全勝利」まで戦争を続行すると繰り返し、国際的な圧力を拒否。「ラファ攻撃をやめるのは戦争に負けるということだ」と述べ、ラファの住民を他の地域に退避させる計画を策定するよう軍に命令、ラファの制圧をイスラム世界のラマダン(断食月)が始まる3月10日までに終わらせるよう指示した。


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