2024年11月22日(金)

プーチンのロシア

2024年2月19日

 ウラジーミル・プーチン大統領の政敵で、ロシア北部、北極圏にあるヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所に収監されていた反体制指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏(47歳)が獄中死した。弁護士出身のナワリヌイ氏は2000年代後半から「プーチンのいないロシアを」と批判し続け、3月の大統領選挙に向けても獄中から落選運動を展開していた。

2013年9月、モスクワ市内で報道陣の会見に応じたアレクセイ・ナワリヌイ氏(筆者撮影)

 反体制派からはすでに「政治的な殺人」との声が出ており、ロシア全土でナワリヌイ氏の遺志を継ごうという機運が広がっている。政権が恐れるのは、ナワリヌイ氏が殉教者として位置づけられ、反体制派が一致団結し、政権打倒の導火線の火がつくことだ。

不可解な点の多い突然死

 ロシアのウクライナ侵略開始からまもなく丸2年。そして、プーチン氏が5選目を目指す大統領選挙まであと1カ月。そうした政治的に大事な節目の日を迎える直前に、「プーチンが最も恐れる男」(米紙・ウォールストリートジャーナル)と評された反体制指導者が亡くなった。

 注目に値するのは、ナワリヌイ氏の死を確認したのはロシアの刑務当局であることだ。2月16日、こうした内容の声明が発表された。

 2024年2月16日、矯正施設内でナワリヌイ受刑者が散歩後に気分が悪くなり、すぐ意識を失った。施設の医療スタッフが直ちに駆け付け、救急隊が呼ばれた。必要な蘇生措置は尽くされたが、回復につながらなかった。死亡は救急医が確認した。死因は調査中。

 21年より、プーチン政権を批判した「過激主義」などの罪で服役していたナワリヌイ氏は昨年12月に突然、モスクワ東方100キロにあるウラジーミル州の刑務所から、北極圏内にあり、モスクワ北東1900キロのヤマロ・ネネツ自治管区に位置する刑務所に移管されていた。プーチン氏がこの時期に、2年ぶりの内外大型記者会見を開き、ナワリヌイ支持派の行動が活発化することを恐れた当局が、ナワリヌイ氏をモスクワから遠ざけたとの見方がある。

 2月14日、亡くなる2日前にナワリヌイ氏と面会した弁護士は「会った際に健康状態に問題はなかった」と独立系メディアに話した。その際に収録したとみられる、ナワリヌイ氏が談笑する姿も公開されている。

 ナワリヌイ氏は20年8月、シベリア地方を旅客機で移動中、猛毒の神経剤「ノビチョク」を何者かに盛られ、昏睡状態に陥った。その後、ドイツの病院に移送され、なんとか命を取り留めたが、ナワリヌイ氏のチームはその後、詳細な調査から、この暗殺作戦に、ロシア連邦保安庁(FSB)が関与していたとする報告書を発表した。


新着記事

»もっと見る