2023年9月24日(日)

プーチンのロシア

2023年9月15日

»著者プロフィール
閉じる

西村六善 (にしむら・むつよし)

元外務省欧亜局長

1940年札幌市生まれ。99年の経済協力開発機構(OECD)大使時代より気候変動問題に関与、2005年気候変動担当大使、07年内閣官房参与(地球温暖化問題担当)などを歴任。

 ロシアは崩壊するという議論が国際的に盛んになっている。筆者自身も本欄でその議論をした(「ロシアの崩壊を活用しようとする国はどこか」)。それにつれてロシア国内ではそれを否定し、反対する議論、つまり「ロシアは崩壊しない」という議論が出てきた。

 ロシア政府も国際的な広がりを見せるロシア崩壊論を無視できないと認めた形跡が窺える。公平の為にロシア側の反論を紹介する。

(代表撮影/AP/アフロ)

 この反論は「バルダイ国際討論クラブ」のプログラム・ディレクターであるアンドレイ・スシェンツォフ氏が書き下し、8月4日付で同クラブのホームページに掲載したものである(’Unravelling the ‘Russia’s Implosion’ Narrative’ Andrey Sushentsov, 04.08.2023)。「バルダイ・国際討論クラブ」はプーチン大統領が例年出席して開かれる国際問題や地球規模問題について議論する国際的な知的プラットフォームである。同氏はモスクワ国際関係大学国際関係学部の学部長でもある。

ロシア側の議論はこうだ

 西側諸国では、ロシアの崩壊が間近に迫っているとの見方が主流で、危機を乗り越えようとするロシアの不屈の決意を無視している。西側の政治家たちはロシアの弱点と崩壊のシナリオを議論し、拡散させている。 要するに西側は紛争を終結させたくないのだ。

 ウクライナ危機におけるロシアの戦略は、2021年11月から12月にかけて策定されて以来、揺るぎないものである。特筆すべきことに、これらの目標は外交交渉を通じて達成することもできたはずだが、遺憾ながら西側諸国はこの道を追求しなかった。

 その結果、ロシアは自国の重要な利益を追求するために軍事的手段に頼った。その目的は主に、①ウクライナの非武装化、②米国とウクライナの正式な同盟関係の阻止、③ウクライナと北大西洋条約機構(NATO)の軍事的つながりに対抗する、ことにある。

 これらの目的を達成するロシアの決意は揺らいでいない。ロシアは外交交渉であれ、必要であれば軍事力の行使であれ、あらゆる手段を用いる用意がある。残念なことに、西側諸国では、ロシアの崩壊が間近に迫っているというシナリオが主流で、危機を何としても克服するというロシアの不屈の決意は影が薄くなっている。

 このシナリオは、西側諸国の政治家たちがロシアの弱点について議論することによって広まっている。だから西側は紛争の終結に乗り出そうとしないのだ。

 『Wedge』2022年6月号で「プーチンによる戦争に世界は決して屈しない」を特集しております。特集はWedge Online Premiumにてご購入することができます。

新着記事

»もっと見る