2024年11月21日(木)

プーチンのロシア

2023年8月25日

 ロシアが始めたウクライナ侵略のせいでロシアは国家解体の危機に瀕している。これがプリゴジンの乱以降、ロシアで起きている新しいダイナミズムだ。これは歴史的な激動に繋がるかもしれない。

( ValleraTo/Anthony Paz - Photographer /gettyimages)

 ロシアは3日程度で勝利する計画でウクライナに攻め込んだが、軍事的には常に劣勢を強いられてきた。人的な犠牲と経済的コストは急増している。

 その上、開戦以来ロシア国民は勝利を祝う機会を手にしていない。言い知れぬ不満が鬱積している。

 ロシア国営テレビで常連の男女3人の宣伝隊長の厳しい顔つきと怒声がそれを物語っている。プーチン大統領とロシアには鬱憤を晴らす機会が今どうしても必要だ。

 その最中に、プーチン政権にとってはトンデモナイ方向に議論が動き始めた。鬱憤を晴らすどころではない。それはロシアが崩壊に向かっているという議論だ。プーチン支持派のロシア国民にとっては全く受け入れられない深刻な議論が始まったようだ。

瀬戸際に立つロシア

 ロシア戦略問題の専門家である米国人ジェイソン・ジェイ・スマート氏はプリゴジンのクーデター未遂に動揺したプーチン大統領は「23年間の在任中で最も弱体化した」とメディアで論じた(’Russia’s collapse and Ukraine’s victory is approaching’ Jason Jay Smart 05.07.2023)。この発言には手厳しいものがある。

 「プリゴジンの乱以降、ロシアはかつてないほど崩壊の瀬戸際に近づいている。大統領のリーダーシップの完全な欠如が政権に致命傷を与えた。ロシアの治安組織も崩壊し国内の混乱を鎮めることができない。オリガルヒたちは封建領主のように互いに争うようになり、マフィア国家であるロシアはそれを止められない。

 ……ロシア経済は悪化の一途をたどっており、ルーブルは対ドルで今年44%、過去1年で75%近く下落した。徴兵された若いロシア兵は自分と家族が生きてはいけない程度の給料で死地に追いやられている。一方、プーチン大統領は、陰謀、弱体化する経済、不穏な軍部、混乱する国内政治への対応で手一杯だ。こんな惨めで哀れな政府を命がけで守ろうとするロシア人はいない」

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