2024年12月9日(月)

プーチンのロシア

2023年7月16日

 3日で終わるはずの戦争が500日を超えた。ロシアにとって戦況は好転していない。さらに、6月23日の民間軍事会社ワグネルのプリゴジン隊長の蜂起以降、ロシアをめぐる内外の情勢は急速に流動化し、プーチン大統領の指導性にも疑問符が付いた。政治も経済も社会も混乱してきた。

(ロイター/アフロ)

 多くの分析者やメディアはすでに「ロシアの崩壊」というテーマで議論している。ロシアは崩壊に向かっているのか。

揺らぐプーチンの権威

 今や、ロシアではなんでもアリという状況になっている。なによりも、大統領の権威が急落し始めた。

 大統領にとってはウクライナ戦争を続け、勝たなければ政治生命が更に弱体化する。そして、戦争を止めても栄光と讃辞を浴びる可能性は無い。

 2024年5期目を目指す大統領にとっては、抜き差しならない状況に追い込まれた。大統領は、今やウクライナ戦の行方よりクレムリンでの権力維持の方が重要だと判断している。そういう国際世論の指摘だ。

 最も深刻なダメージは、今回の事件で「全能の指導者プーチン」というイメージが粉砕されたことだ。カーネギー財団のアンドレイ・コレスニコフ上級研究員は同財団のサイトでこう論じた。

 「ロシアの権威主義、全体主義の下で、プーチンとそのエリート側近は市民社会を封殺し、抑圧システムを構築した。民主主義や市民的価値観を否定し、無意味な軍事拡張を進めてきたが、そうする限りロシアは繁栄できない。その上、この反乱はロシア国家の衰退を世界に暴露した。更にロシア国民にプーチンの指導力を疑わせ、国民が思っていた全能の皇帝ではないことを明らかにした」(”No Return for Yevgeny Prigozhin—or Russia”28.06.2023, Andrei Kolesnikov)


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