2024年5月20日(月)

プーチンのロシア

2023年7月16日

ロシア国内で亀裂

 ロシア軍は世界でも恐らく最も統制の取れていない軍隊だとされているだろう。専門家の意見よると、作戦、運用、指揮系統、装備、連携、後方支援など、全ての側面で不十分な体制で戦争をしているらしい。米国の退役軍人で米中央情報局(CIA)長官も務めたデビッド・ぺトレイアス氏は多くのサイトでそのことを詳しく説明している。

 また、著名な軍事専門の評論家であるダラ・マシコット女史はツイッターで「将校レベルでは相互不信と怨嗟、猜疑心と裏切りがはびこっている。……高級、中級ロシア軍上層部の機能不全はピークに達しており、権力に真実を語ったという理由で別の将軍が解任され、他の将軍も拘束されたり、疑いをかけられたりしている」と述べている。

 経済面でも追い打ちがかかっている。

 このところ、ルーブルは対米ドル、対ユーロで過去最安値を更新中だ。ルーブルは昨夏以来わずか1年で、対米ドルでその価値の4分の3近く下落し、対ユーロでは半分となった。市場がルーブルに対する信頼を失っていることを示している。

 石油とガスの収入に依存する経済だ。ロシア人の豊かさは縮小している。貧困化は避けられない。

 大統領が自分の支持層と考えているモスクワとサンクトペテルブルクの市民社会に悪影響を及ぼしている。ロシア人は過去数十年間慣れ親しんだ快適さを享受できなくなり、貧困に陥ると欧米の専門家はみている。

 大都市以外の地方の財政の悪化はさらに深刻だ。政府からの資金の移転が縮小しているので、今までの生活水準は維持できなくなった。

 貧困の度合いが増大している。基本的なインフラの維持管理、自治体が提供するサービス(ゴミ収集、造園、医療衛生、教育、幼稚園の施設など)に廻す資源は枯渇している。

 その上、ワグネルは国家予算で運営されていたことまで明らかにされた。ワグネルは元来違法な私兵だとされてきたが、実は国が国費で支えて来たというのだ。相当深刻なデタラメが蔓延っているに違いない。

外交的にも面目を失う

 フランスのマクロン大統領は12日、北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が開催されたリトアニアの首都ビリニュスで、「ロシアは現在、軍事的にも政治的にも脆弱だ」と述べ、「ロシアには分断の兆しがある」と指摘した。

 さらに、トルコの行動はプーチン大統領を激怒させたと伝えられている。エルドアン大統領はこの首脳会議でスウェーデンのNATO加盟を容認する姿勢に転じた。いずれもプーチン大統領にとっては不利な材料である。


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