2024年12月4日(水)

プーチンのロシア

2023年9月14日

 ロシアのプーチン大統領が9月13日、極東アムール州ボストーチヌイ宇宙基地に北朝鮮の金正恩総書記を招待し、4年5カ月ぶりとなる2度目の首脳会談を行った。両者を結びつけたのは、ロシアのウクライナ侵攻継続への強い意欲と、経済制裁やコロナ禍で受けた甚大なダメージを回復させる北朝鮮の思惑が一致したから。

4年5カ月ぶりとなる2度目の首脳会談では、プーチン大統領(右)と金総書記の距離が大きく縮まった(ロイター/アフロ)

 ロシアは北朝鮮から、喉から手が出るほどほしい弾薬や兵器を入手し、北朝鮮は外貨や食糧、エネルギー資源に加え、「核」「軍事衛星」「潜水艦」技術をも得る可能性がある。相思相愛の反米連合の二国間関係が強固になれば、北東アジア全体の安全保障環境がさらに「瀬戸際」に追い込まれる恐れがある。日本が警戒すべき最悪のシナリオは、北の「ベラルーシ化」だ。

会談の一挙手一投足を世界へアピール

 遅刻魔で知られるプーチン大統領は今回、金総書記を丁重に出迎える役割にまわった。

 13日午後、ボストーチヌイ宇宙基地の建物前で、防弾車で訪れた金総書記を笑顔で出迎え。40秒間も握手を交わしながら、「お会いできてうれしい。長旅でしたね」と声をかけた。

 金総書記は「忙しいのにもかかわらず、招待をいただき感謝します」と応じた。

 その後、2人はごく限られた少数の両国幹部、メディアクルーとともに基地の中に入り、ロシアの最新鋭ロケット「アンガラ」の組み立て工場や、ロケットの発射台を視察。ロシア側は同時中継でその様子を伝え、注目の高さがうかがえた。

 国営テレビの記者は「金総書記は詳細に多岐にわたり、宇宙基地について質問をしている。これまでどんなロケットが発射されたのか? また今後はどんな計画があるかを聞いている」とつぶさに現場の状況をレポートした。また、金総書記は「この基地から発射されたロケットのエンジン出力はどれくらいか」と、ホスト役の職員に熱心に質問していた。

 プーチン大統領は、北が進める人工衛星開発の支援を表明し、「(金総書記は)ロケット技術に大きな関心を示しており、宇宙開発も進めようとしている」と答えた。

 ロシアの片田舎にある宇宙基地での両者の一挙手一投足ぶりは、世界中に伝えられた。

 プーチン政権は今、自国に不利な報道を一切させない厳格な情報統制を敷いており、現場の報道陣の熱気ぶりは、プーチン・金会談の実現を大々的にアピールしようとする政権の姿勢が透けて見える。

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