ペスコフ露大統領報道官も「ロシアは国連安全保障理事会での立場を維持しているが、それが露朝関係のさらなる発展を妨げることはできないし、妨げることもないだろう」と語っている。
北から武器・弾薬の供給を受けることについての情報は表に出ていないが、制裁逃れを指摘されながらも、北との関係強化を図るという相矛盾したプーチン政権の姿勢は、「(ウクライナ戦争で)ロシアの勝利以外選択肢はない」(ショイグ国防相)とする強い意志の表れに過ぎない。
今回の金総書記の極東ツアーは大掛かりになるようだ。プーチン氏は、北の訪問団が今後、ウラジオストクやコムソモリスク・ナ・アムーレの軍需工場を視察することも明かした。宇宙開発や農業面での支援強化も図るといい、冷戦時代の友好関係以上の関係性が深まるかもしれない。
日本も想定すべき最悪のシナリオ
北はこの日にあわせて、日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射し、いずれも日本の排他的経済水域(EEZ)の外側に落下した。格好の覚悟の表れだ。ロシアの支援を受けた北の「核」「ミサイル」は日本にとってさらに脅威になる恐れが出てきた。
最悪のシナリオは、北の「ベラルーシ化」だろう。ロシアはウクライナ侵攻のどさくさに紛れて、戦術核をベラルーシに配備し、さらに、民間軍事会社ワグネルの戦闘員まで派遣し、ウクライナを支援する隣国ポーランドやバルト三国を刺激して見せた。
ウクライナ危機の深刻化に伴ってVUCA(「Volatility」(不安定)「Uncertainty」(不確実性)「Complexity」(複雑性)「Ambiguity」(曖昧性)の4つの頭文字を取った)の時代がさらに顕著になっている。
まさに一寸先は闇の中で、北の「ベラルーシ化」は懸念される1つのシナリオに過ぎないが、もし、ロシアがウクライナ支援国をけん制するためワグネルのような戦闘員を北に送ったら、日本はどう対処するのか?
欧州はいま、ロシアの核の脅威にさらされているが、日本も同様の危機に直面するリスクは、今回の北への接近で高まったと言わざるを得ない。
今回、プーチン大統領と金総書記は何を話し合ったのか、今後、どのような手段で関係を強化していくのか――。さらに、ウクライナ情勢への波及がどれほどあるかは、米国、韓国と一緒になって、監視を強化し、情報共有を密にしていく必要があるだろう。
今回の会談を、中国の習近平政権がどう評価するかも、情勢を見極めるうえで、重要なポイントになる。