2024年12月10日(火)

プーチンのロシア

2024年2月19日

 そのため、プーチン政権は、リーダーを失ったナワリヌイ一派の動きは従来の方策で封じ込めることができると考えていても不思議ではない。一方で、ナワリヌイ氏の支持者たちが、戦争の長期化によって暮らしが暗転し、不満を募らせている層や、戦争で愛する夫、息子を失った「母たち」のグループと結びつけば、政権打倒に向かう大きな核になる可能性もある。

 3月の大統領選まで、反体制派がどのような行動を取るか、そしてプーチン政権が彼らの動きをどのように取り締まるかは、戦争の行く末にも大きな影響を及ぼすだろう。

ナワリヌイが生前に遺した言葉

 奇しくも今年1月下旬、ナワリヌイ氏は自らのテレグラムチャンネルで、ロシアに帰国して3年目になる節目の日に声明を出していた。

 なぜ、当局に拘束・収監されることが予想されながら、安全なドイツからロシアに帰国したのか? 多くのロシア人から出される質問に、ナワリヌイ氏はこんなメッセージを送っている。

 「私にも自分の国があり、自分の信念がある。そして、私は自分の国も自分の信念も放棄したくない。さらに、自分の国も信念も裏切ることはできない。自分の信念に価値があるなら、喜んで、その信念に立ち向かう必要がある。ある程度の犠牲を払ってまでもだ」

 「権力につく者は変わらなければならない。権力を選出する最も良い方法は、公正で自由な選挙だ。誰もが公正な裁きを必要としている。腐敗は国家を破壊させてしまう。検閲などあってはならない」

 「(今は)嘘、嘘ばかり。偽り以外なにもない。国家はこの状況ではいずれ崩壊してしまう。プーチンの国家は存続不可能だ。ある日、私たちが彼がいる場所をみると、いずれ彼はその場所にいなくなるでしょう。勝利は避けられない。私たちはあきらめてはならない。自分の信念を貫かなくてはならない」

 「ナワリヌイのいないロシア」が「プーチンのいないロシア」を導くのかどうか、そして、33年前に1つの国家が崩壊したように、再び、歴史的な審判が下されるのかどうかは、ロシア国民の掌中にある。その判断は21世紀の国際社会の姿をも決めることになろう。

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