南アフリカは、イスラエルによるガザ地区への軍事作戦をジェノサイドに当たるとして国際司法裁判所(ICJ)に提起し、戦闘の停止を命じるよう求めた。この問題で、Economist誌1月20日号は「イスラエルをジェノサイドで告発することは裁判所を愚弄するものである。それはガザでの本当の人道的危機から注意を逸らす」との社説を掲載している。社説の要旨、次の通り。
ナチスによるホロコーストを受け、国連はジェノサイド条約を採択、国籍、人種、宗教に基づいて人間の集団を抹殺する試みは再び許さないと約束した。ICJに提起される訴訟は、世界がその約束を守り、ジェノサイドに対するタブーを強化する助けになるべきである。
しかし、イスラエルがパレスチナ人にジェノサイドを行っているとの南アフリカ(南ア)の主張はジェノサイドの言葉を安っぽくし、ジェノサイドの防止を目指す法の体系を弱める危険がある。この提訴で南アはICJを愚弄している。
ジェノサイドが成り立つには、イスラエルがガザでパレスチナ人であることのみを理由に人を殺していることが必要だ。しかし、イスラエルは攻撃に対応してハマスの戦闘員を標的にしているのである。
南アの主張は、パレスチナ人の死亡の責任をイスラエルにのみ負わせ、学校や病院から戦闘を行うハマスの戦術の正しさを示すことにもなる。
裁判所がその管轄権が及ばないハマスではなくイスラエルにガザでの軍事作戦をやめるように求めるのは更に馬鹿げたことだ。イスラエルは今も攻撃されている。イスラエルは自衛権行使を諦めることは拒否するだろう。
南アの告訴は法的というより政治的であり、原理的には不十分である。もっともらしくない犯罪に焦点を合わせることは、イスラエルが戦争法違反をしている可能性から注意を逸らすことになる。戦争法は、民間人と戦闘員を区別し、過剰な武力行使を避け、民間人の死傷者を最小にすべきことを要求する。
女性と子供の死亡者数はイスラエルがこれらの義務を果たしているか、深刻な疑念を提起する。イスラエルはまた占領地で民間人に医療品や食料を提供するジュネーブ条約上の義務を果たしていない可能性がある。
ガザが飢餓に近づく中、ガザの住民は、大向こう受けではなく食糧を必要とする。イスラエルの指導者は、その供給を阻止すれば世論という裁判所で責任追及されると認識する必要がある。
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