ウォールストリート・ジャーナル紙の2023年12月26日付け解説記事‘Iran adds to Pressure on U.S. With Nuclear Program Acceleration’が、イランの核開発の現状とそれを巡る米イラン間の緊張の高まりを報じている。主要点は次の通り。
イランは、いったん減速させた濃縮ウランの生産速度を再び3倍に増加させた。これは米イラン間の緊張をより高め、米国とイランの間の静かな外交努力の崩壊を意味する。
23年12月24日に国際原子力機関(IAEA)は、イランが2カ所の核施設でのウラン濃縮を再び3倍に加速させたと報告した。この生産ペースの加速によりイランは、再び60%濃度の濃縮ウランを月々9キロ生産出来ることになる。イランは2週間以内に60%の濃縮ウランを兵器級(90%)に濃縮することが可能であり、既に核爆弾3個分に十分な(60%の)濃縮ウランを保有していると言われる。
米欧の政府関係者は、イランに対して、仮にイランが兵器級の濃縮ウランを生産するならば、イランに対する経済的、外交的な圧力を急激に高めるだろうと警告している。さらに、イスラエルは、濃度90%の濃縮ウランを生産すれば、軍事行動に出ると警告している。
23年春、オマーンで米国とイランの間で何回か間接交渉が行われ、イラン側と米側は段階的な緊張緩和策を議論してきた。その結果、イランは、いったん、核開発を抑制した。米側は、その見返りに米国が凍結したイランの数十億ドル分の資産の凍結解除、イラン産原油の禁輸を緩めることを示唆し、イランの核開発問題についての協議を再開することを期待した。
10月中旬に次の間接交渉が予定されていたが、10月7日のハマスの攻撃をイランが支援したため米側は交渉をキャンセルした。2万人以上の死者が生じているガザの紛争で中東地域のボラティリティが高まっている時にイランが核開発を加速したことは、イランと米国が衝突する潜在的可能性を一層高めている。
イラクとシリアに駐留する米軍に対するイランの代理勢力による攻撃が続いている一方で、米国はヒズボラに対する抑止を強化するために2つの空母打撃群と原子力潜水艦を地中海東部に派遣している。さらに、イランが支援するイエメンのフーシ派による商船への攻撃が拡大するのに対して紅海に任務部隊を編成し、空母アイゼンハワー打撃群をイエメン沖合のアデン湾に派遣した。
米政府関係者によれば、イランの中東域内外における広汎な挑発に対して、バイデン政権はイランに対してどのようなアプローチをするべきかについてより激しい議論を行っている。イランの広汎な代理勢力を利用する能力は前例のない程であり、対処しなければならないという意見が以前より強くなっている由である。
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