昨年の10月に起きたハマスによるイスラエル奇襲攻撃後、国際的な中東への関心はガザ情勢に集中しているが、イランの核開発問題も看過出来ない問題であり、この記事はイランの核開発問題の現状について教えてくれている。
イランがいったん減速させた濃縮ウランの生産速度を再び3倍に増加させたことは、ガザでの衝突を契機とするイランの代理勢力を用いた挑発が高まる中で米・イラン間の緊張をより高めるものである。さらに、このことは、米国とイランの間の静かな外交努力の崩壊を意味する。その結果、バイデン政権内では、イランに対して外交的解決よりもより厳しい対応するべきだという意見が強まっているようだ。
昨年の春、オマーンで米国とイランが秘密の交渉を行っていることが暴露されたが、その合意内容は、米国は、拘束米国人の解放とその見返りに韓国で凍結されていたイランの原油代金の凍結解除、イランの原油の輸出に対する取り締まりを緩め、イラン側は濃度60%のウラン濃縮の速度を落とす、ということであった。しかし、10月のハマスの攻撃で、米国は再交渉を中止し、資金を再凍結した。
イラン側もウラン濃縮のスピードを元に戻した。したがって、解説記事も指摘する通り、米国の望んだ外交努力は失敗したと言わざるを得ないだろう。
そもそも、この交渉は、双方が問題の抜本的解決を目指したのでは無く、「時間稼ぎ」だっただろう。米側は、イランの核開発をスピード・ダウンさせ、かつ、イスラエルとサウジアラビアの国交樹立を急いだ様に湾岸アラブ産油国の安全保障枠組みにイスラエルを加えるための時間稼ぎであり、イラン側は、既に核爆弾3個分相当の濃縮ウランを得ているので、恐らく、起爆装置の開発のための時間稼ぎだったのではないか。
紅海での〝衝突〟がおよぼす影響
上記の記事は米政府関係者のブリーフに基づくものと思われるが、米政府内部で少なくとも代理勢力を通じた域内情勢への干渉に対して外交的解決以外の方法を考えるべきであるとの声が強まっているという。フーシ派の紅海での度重なる商船攻撃に対して米国が多国籍軍を結成したことは、そうした対処の一つとして挙げられよう。
これは明らかに、フーシ派の船舶攻撃拠点に対して武力行使を行う前触れのように思われたが、果たして、1月12日、フーシ派の拠点を空爆し、さらに、米軍は、翌13日、再度空爆を行った。恐らく、フーシ派は怯まず、引き続き船舶攻撃を続けようとするだろう。
気を付けなければいけないのは、船舶攻撃が成果を上げない場合、再度、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)への攻撃を再開する可能性である。その場合、ペルシャ湾情勢は急激に緊張し、油価は高騰しよう。