2024年5月9日(木)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年2月19日

 例えば漁業者からの漁獲情報を船上や漁港・漁況で電子的に入力、これを即時に研究機関や政府・自治体の担当部局等に送信して共有するなどすれば、直近の情報が容易に入手できるようになるだろう。先述の筆者も出席したワークショップの場でも漁業者から、日本中に分布する定置網を漁獲データの定点観測基地として利用してはどうかとのアイデアが示されたが、このように漁業者の持つデータを積極的に活用することが望まれる。

 こうした取り組みを行う漁業者には実施のための予算を国が充当することを通じてサポートすれば、漁業者と国とのWIN-WINの関係が築けるだろう。

税金を消費者である国民のために

 魚の水揚げをする漁港でのデータ収集ということであれば、漁港整備予算からの充当も検討され得よう。漁港漁場整備等に対する公共予算は24年度予算案で水産予算総額の約3分の1となる1143億円(前年度補正含む)を占めているが、漁業者人口が急速に減少するなか、インフラ整備ばかりに税金を注ぎ込むことが適切とは言い難い。

 24年度予算案では漁港の就労環境改善、安全対策向上・強靱化や資源管理・流通高度化等のためとして「漁港機能増進事業」の項目の下で14億5000万円の予算が組まれている。これは非公共予算であるが、公共予算の一部でもこちらに振り向けて情報処理設備の充実に充てることも考えられるのではないか。

 正確な気象予報には最新かつ大量の気象データやリソースが必要不可欠であるように、資源のトレンドを的確に掴んで将来予測を行い、科学的な資源管理を行うためには、そのためのリソースが必要となってくるだろう。的確な資源評価は、今後拡大が企図されている漁獲総枠の設定に基づく科学的資源管理に対して漁業者からの信頼を得るためにも望まれよう。

 水産改革によって水産予算は大幅に増額されている。問題は予算がないのではなく、いかに予算を適切に振り分けるべきであるかのように考えられる。

連載「日本の漁業 こうすれば復活できる」では、日本漁業にまつわるさまざまな課題や解決策を提示しております。他の記事はこちら

   
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