飛び交う漁業者からの苦言
ところが、先頃水産庁より発表された23年度では評価が一転、太平洋側のマサバ資源は漁獲圧はぎりぎり適正水準であるものの、資源量は望ましい水準を割り込んでいるという意味で「乱獲」との判断を下した。日本海側のマサバ系群については前年度と同様、漁獲圧が高すぎ、また資源が望ましい水準を割り込んでいるという二重の意味での「乱獲」と評価し、ゴマサバについても昨年度同様太平洋側・日本海側の資源双方ともに二重の意味での「乱獲」と評価したことから、日本周辺の全てのサバ資源が何らかの意味での「乱獲」という判断になったのである。
さらに言うと、日本海側にしても太平洋側にしても、漁獲される魚の主体は0歳から1歳の「子ども」である旨が指摘されている。まだ幼くて卵を産む能力がなく、脂ののった成熟したサバと比べて経済的価値も大きく劣るさかなを取り続けていることになる。
先日開催され筆者も参加した資源管理に関するワークショップの場では、楽観的な資源予測の下に枠を設定したにもかかわらず、大量の未消化枠が残ってきていたことに対して、静岡で漁業を営み意欲的に資源管理に取り組む日吉直人日本定置漁業協会理事から「そんなものはTACでも何でもない」との批判が上がった。彼からは「資源予測が一番欲しいのは僕ら(漁業者)だが、ほぼ当たったことがない」との苦言も呈された。
サバに限らず、漁業者からは国が実施する資源評価に対する批判の声が少なくない。2020年12月に施行された改正漁業法では、資源評価に基づく科学的な資源管理が目指され、原則として漁獲総枠(漁業法では「漁獲可能量」と呼称)の設定による管理が基本である旨が法律上定められている(漁業法第8条)。
このため水産庁が公表したロードマップによると、これまで漁獲総枠設定は8魚種であったところ、漁獲量ベースで8割を総枠設定により管理することが目指されている。しかし改正漁業法施行から既に3年が経過した現在、ようやく今年からタクチイワシとウルメイワシの日本海・東シナ海に分布している系群(対馬暖流系群)が追加されることが決まり、7月からマダラの本州日本海北部系群への導入が予定されているにとどまっている。