直近の日本企業の業績はおおむねしっかりと推移しており、株価がかけ離れた値動きをしているわけではないという見方がある一方、このところの急ピッチの株価上昇に不安を覚える一部投資家がいるのも理解できる。
投資家を不安にさせるもの
世界経済の現状を見ると、主要国は経済の緩やかな成長減速(軟着陸)を模索しているものの、米国経済は依然強く、さらにAI分野やハイテク分野への投資も活発で、堅調な動きを見せている。日本についても好決算が見込まれる会社が多く、今年の春闘では一段の賃上げも期待されている。
ただ、人々の間には景気が良くなっているという実感は筆者自身を含めてあまりない。給料が十分に上がっておらず、最近の物価高に十分対応できていないのがその一因であろう。株価が高くても「体感温度」は低いままなのである。
だが急激に上昇していることから「過熱感」の三文字が脳裏にちらつくのは市場関係者の常である。株高期待から一転下落し、長期デフレにつながっていったかつての市場の姿がトラウマのように思い出されるのも無理はない。
前述のフィナンシャルプランナーが期待するように年末に日経平均株価が4万5000円台を付けるかどうかはともかく、市場関係者の間には4万3000円前後の水準にまで上昇すると見る向きが多い。
しかし不透明要因はいつの時代にもある。新型コロナウイルスのような感染症の蔓延や、潜在的な地政学的リスクが顕在化してくる可能性などは常にあり、上昇していた株式市場が何かをきっかけに大きく逆方向に向かうことも考えられる。
世界情勢も大きく変化する可能性
米国経済は現在のところ堅調に推移しているが、いつまでもこの状態が続くことは考えづらい。世界経済は軟着陸する可能性が高まっていることが先日ブラジルで開かれた主要20カ国・地域(G20)財務相会議でも総括されたが、何らかの外的ショックで景気悪化や金融市場の混乱が起こる可能性はゼロではない。
中国経済の低迷で日本に資金が流入していることも直近の株高に影響していると指摘されている。その中国経済がどこに向かうかも世界経済のリスク要因になっている。そして日本では、いつ日本銀行がマイナス金利を解除するかが経済界の関心事だが、そのタイミングによって金融市場へのインパクトがどれぐらい出るかも注目される。