都内で働く30代の男性フィナンシャルプランナーは日経平均株価が4万円の大台を突破したことを受けて、日本株のブル型投信を購入した。「ブル型」とは、日経平均などの相場が上昇した時にその値上がり幅を上回る利益が出るように作られたファンドである。今後もまだ上昇余地があると見ての判断だ。ちょうど資産形成の相談に訪れていた50代の会社員とともに株価上昇の話題になり、「(年末までに)4万5000円ぐらいまで上がってくれたら今年はいい相場だったと実感できるのだが」と本音を漏らした。
日経平均は2月22日にバブル期につけた終値としての史上最高値を更新し、その後すぐ3月4日には4万円を突破して未踏の領域に突入した。株価水準が4万円の大台に突入するという歴史的な節目であり、当然この日のトップニュースにはなった。
だが、正直バブル期のような高揚感はなかった。当時の記憶が残る筆者にとっては、「メディアも比較的地味な扱いで冷静な大台乗せだな」という印象が強かった。
かつてのバブルと何が違うのか
これまでの報道を見ると、現在の株価上昇はバブルではなく、まだまだ上がる余地があるという見方と、実は急激に上がりすぎて既にバブルの予兆が出ているのではないかという懸念の両方があるように感じる。
バブルではないという見方については、多くの専門家が現在のPER(株価収益率)は16倍程度と、60倍を超えていた89年12月末の水準に比べて低いというデータを根拠にしている。株価の上昇は企業収益に見合った結果であり、1980年代末から90年代初め頃のように、本来の企業の実力から乖離したバブル的な要素は乏しいという見方はほぼ共通している。
平成のバブル期と違うもう一つの特徴は、24年1月からの新しい少額投資非課税制度(NISA)のスタートを受けて個人投資家が買いを入れている点である。それに外国人投資家による旺盛な買いが重なって、株式市場は底堅く推移しているといえる。
インターネット証券の普及で株式や投資信託が手軽に買えるようになったこともあり、投資の裾野は二十代の若年層にも広がっている。社会人になった直後からコツコツと積立投資を始める人も多い。
一方「現在の株高はバブル」という見方については、89年12月29日の大納会で日経平均が当時の史上最高値3万8915円を付けた後、年明けから急速に下落したという記憶が投資家の間でまだ生々しく残っているからとみられる。